A-COLLECTION

山陰の住まい

設 計|木村哲矢

施 工|ASJ 鳥取スタジオ[株式会社田中建設]

構 造|木造軸組工法 平家建て

撮 影|中村写真工房 中村大輔

「大人」の人物にふさわしい「大人」の建築をつくりたい、そのような想いにかられて私の中ではこの計画が始まりました。

建築主の方はご夫婦ともに責任ある職に就かれ、社会的にもさまざまに寄与していらっしゃいます。数々の経験と実績の上に築かれたそのお人柄は自信に満ちつつも尊大さや押しつけがましさは微塵もなく、穏やかに、品位ある物腰でいらっしゃいます。

そのような人に足る建築とはどのようなものであるか。おおらかで包容力に満ち、表層的な美ではなく内面からにじみ出る魅力を備え、昨日でき上がったばかりのような初々しさではなく、ずっと前からそこにあったようでありながら、みずみずしさ新鮮さを備え、時間と共にますます醸成していく、品位ある建築。そのような住まいを実現していきたいと、私は願いました。

2方が道路に面したゆとりある敷地に、計画は平家で進められました。

通風採光のために随所に庭をちりばめた室の配置は、広がりをより感じさせるため主庭に面しては斜めに雁行し、大きな平面形に対しては回遊性や曲折する動線で変化や利便をはかっています。

軒の深い大屋根の重なりは、住まいの外観に落ち着いた陰影を与えると共に、その屋根の形状をそのままあらわした室内は、おおらかに包まれた安らぎを有しています。けれどもその一方で深く大きな屋根は、日照時間の少ない冬の山陰地方では室内を充分な光で満たしてはくれません。あえて室の領域から外したところに設けられた天窓からは、障子を透過した光が上部斜めの壁で反射して室内に広がり、柔らかく光を補います。

深い軒の下、外壁に張られたスクラッチタイルは1枚1枚が異なる表情を見せています。タイル職人の方々が時間と労力をかけ、1本1本押さえて仕上げた目地が、味わいを醸し出しています。妻壁と道路に沿った壁面には、さりげなく模様張りをしのばせました。

住まいは人を表すといいます。この建物が愛され住みこなされ、年を経て、住み手の方々に真にふさわしい住まいへと育っていけるものであることを願っています。

(木村哲矢)

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