A-Style 家づくりの経済学  82
家づくりの経済学
 
家づくりの経済学(82) 住宅取得環境の変化

日本銀行が、量的緩和政策を5年ぶりに解除しました。どの新聞やテレビでも「いよいよ金利が上昇局面に入り、住宅ローンへの影響も避けられないだろう」との見方を示していますし、これから家づくりに取り組もうという方や住宅ローンを抱えている方にとっては、やはり気になるニュースでしょう。

日銀では当面、ゼロ金利政策を継続すると表明しています。しかし、いずれは金利も上昇するでしょうから、問題は、いつ頃から、どれぐらいのスピードで金利が上昇するか。家づくりや住宅購入のスケジュールも大きく影響を受けるわけですから、今後しばらくは経済動向に神経を尖らせる必要がありそうです。

次に日銀がゼロ金利政策に手をつけるとすれば、今回の政策変更の影響を見極めた後ということになると思われます。今後の予定としては、先週発表になった公示地価動向(1月1日時点)に続いて、4月の日銀短観、5月の企業決算発表、6月の経済財政諮問会議「骨太の方針」決定、7月の日銀短観と続きます。

公示地価は全国平均で見れば、下落傾向が続いていますが、大都市圏の商業地が上昇に転じました。それを「資産デフレから脱却した」と解釈するならば、政府の“脱デフレ宣言”もそう遠くないかもしれません。

 

[居住コスト]=[金利負担]+[減価償却費]+[固定資産税等]+[維持管理費]

+[保険料等]

この数式に照らして、最近の住宅取得環境の変化をまとめてみると、次のようになります。

<金利負担>

この項目に最も大きな影響を及ぼすのは、もちろん“金利”水準です。フジサンケイビジネスアイに掲載されていた試算によると、住宅ローンを3000万円借り入れた場合(借入期間35年、全期間固定金利、元利均等返済、ボーナス払い分1000万円)の総返済額は、金利2%では4177万8000円(年返済額119万円)ですが、金利3%では4854万7000円(同138万円)。実に677万円も返済額が増えてしまう計算です。

これだけの違いが生じるのですから、誰もが少しでも金利の低いときに家を買おうと考えるのは当然でしょうし、新聞などが指摘しているように「金利先高感による駆け込み需要が発生するだろう」との現象が起る可能性は高いと考えられます。

<固定資産税等(税金)>

税金で注目されるのは、住宅取得控除と消費税の動向です。以前にも取り上げたように、住宅取得控除については99年に導入された優遇措置が07年に向けて段階的に解除される過程にありますが、現時点ではまだ優遇措置の恩恵が受けられます。一方で、消費税は将来的に税率引き上げが避けられない方向ですから、税金の面でも先々、負担が増大することが予想されます。

<保険料等>

今回の耐震強度偽装問題をきっかけに、住宅の品質保証を保険でカバーするという話が出てきました。供給側に保険への加入が義務付けられることになれば、コストアップ要因になるわけで、居住者にとっても間接的な形で保険料負担が増えると考えられます。

 

金利、税金、保険料のいずれも、負担増が避けられない情勢です。さらにマンションでは、大都市圏のマンション適地がすでに地価が上昇に転じていますし、マンション建設コストもデフレ脱却による資材価格の値上がりや、耐震強度偽装問題で厳しいコスト削減がやりずらくなるなどの影響が出てくれば、上昇圧力が加わることになります。

「今が住宅取得のラストチャンス!」—そう言わざるを得ないような材料ばかりが揃っているのは確かです。

しかし、視点を換えれば、住宅取得に対する考え方を見直す良い時期ではないのかとも思うのです。このコラムでも、終身雇用・年功序列で賃金も右肩上がりで上昇してきた時代に唱えられていた数々の『定説』について検証を行ってきましたが、格差社会が広がるなかで、住宅ローンの返済負担率を基準に「何が何でも新築住宅を取得するために、お金を借りられるだけ借りる」ことで生じるリスクをどう判断するかです。

 

先に示した数式の[金利負担]も、金利水準だけで決まるわけではなく、親からの贈与などで自己資金を増やしたり、土地取得はせずに定期借地権にしたりしても軽減できます。[固定資産税等]の消費税も、個人が所有している中古住宅を直接購入する分にはかかりませんし、[減価償却費]も中古住宅であれば負担が軽くなります。要はリスクを適切に判断できるかどうかであって、それに応じた住宅取得の方法はいろいろあるのです。

目を先に向ければ、2007年からはいよいよ団塊の世代の定年退職が始まります。1947〜49年生まれの方は約690万人、世帯数では300万世帯以上だと思われます。団塊世代の持ち家比率は平均の6割を大きく上回っているでしょうから、彼らが所有している住宅は200万戸以上に達するかもしれません。

定年退職を機に、郷里に戻る人、第2の人生で田舎に移住する人、郊外の戸建てから都心のマンションに住み替える人—当然、所有している住宅や宅地が市場に放出され、人口比でみると、団塊世代は他の世代に比べて2−3割多いわけですから、単純に物件数も同程度増えることが予想されます。

地価が上昇し始めた大都市中心部の住宅であれば、投資として土地を購入するとの考え方でも良いかもしれませんが、今後急速に人口減少に向かう時代、郊外や地方都市での地価動向はどうなるでしょうか。先行きの予想が難しい時代に突入しているだけに、住宅ローン金利など環境変化ばかりに目を奪われるのではなく、リスクを適切に判断することがますます重要になっていると思うのです。
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