A-Style 家づくりの経済学  70
家づくりの経済学
家づくりの経済学(70) 材工一式と材工分離(2)

日本の木造住宅は、自動車のような工場生産ではなく、工事現場で大工などの職人による手づくりに近い形でつくられてきました。その前提であれば、住宅の価格は「材料費」と「工賃(労務費を含む)」の単純な掛け算で表すことが可能な商品でした。

家の材料は国産木材と土(土壁や瓦など)や石などの自然素材ばかりで、施工方法も伝統的な工法でほぼ同じ—。そうであれば、建物の価格とグレードは、材料の良し悪し、施工や細工の良し悪しにほぼ比例して決まり、材料費と工賃を一式でまとめた、「材工一式」による坪単価で住宅の価格を考えても問題はなかったと言えるでしょう。

ところが、戦後の極端な住宅不足のなかで、プレハブ住宅が誕生し、化学製品などを使用した新しい建築材料(いわゆる新建材と呼ばれてきました)が次々と生み出され、住宅の工業化が急速に進んできました。

材料も海外から輸入された木材や工業製品など多種多様。工法も在来工法、米国から導入された2×4工法やプレハブなど千差万別。ハウスメーカーによる住宅のブランド化戦略(グッチやシャネルと同列には論じられないかもしれませんが…)も進みだして、坪単価とグレードの関係を判断する尺度が大きく崩れてしまったのです。

坪単価が同じ55万円のハウスメーカーのプレハブ住宅と、工務店の在来工法住宅とがあった場合、消費者はどちらの住宅のグレードが高いと判断するでしょうか?

少なくとも坪単価だけで単純に商品の価格やグレードを比べて判断するのは難しくなっています。消費者の方の判断も、大きく分かれるかもしれません。

昔ながらの在来工法で家を作ってきた私の父に言わせれば「会社の本社経費やら、テレビ・新聞の高い宣伝費をかけているハウスメーカーの家は、材料費を大量仕入れで安くしている分を考慮しても15%は高い」と言い続けていました。

確かにハウスメーカーの決算資料を見る限り、工事粗利益率で25—30%(一説にはもっと高いとも言われますが…)も出して、広告宣伝費などの販管費は15%以上。工事原価にはさらに各支店経費や現場管理費も含まれていますから、下請けの工務店への発注額は“推して知るべし”でしょう。

どの業界でも、下請け業者の厳しさは同じ。工務店も出来れば下請け仕事は避けて、元請けで仕事をしたいはず。それにも関わらず、下請けに甘んじている工務店は、何が原因でそうなっているのか、と思わず穿った見方をしてしまいます。

一方で、コラム(66)で書いたように、大手ハウスメーカーの方が信用できると評価する人も増えてきている印象もあります。ある意味、ブランド品を購入するという感覚に近いのかもしれません。

ただ、ハウスメーカーの家が、ブランド品として高く評価されているかと言えば、必ずしもそうなっているわけではないでしょう。耐震・耐火、防犯、省エネ、バリアフリーなどで住宅性能をいくら高めても、多くの人はそれだけで家の価値を考えているわけではないからです。

 

材料も、工法も、ブランドも異なる住宅の価格をどのようにして比べれば良いのか?

ひとつの考え方を示しているのが、中古住宅の査定方法です。この連載コラムでも、国土交通省の外郭団体である(財)不動産流通近代化センターで、中古住宅の査定マニュアルを作成していることを紹介しました。

この査定方法は、地域別の標準建築価格をベースに、内外装のグレードに応じて再建築可能な坪単価を算出。これに築年数による係数などをかけて計算するというものです。標準建築価格は、木造軸組(在来工法)、2×4、木質パネル、鉄骨構造の4つの工法別に設定さており、外壁や内装の仕上げ、住宅設備機器のグレードが標準的なものを標準住宅として1平方メートル当たりの単価が決められています。

ちなみに、私が住む埼玉県さいたま市の標準建築単価は、在来木造が坪45.9万円、2×4工法が坪49.2万円、木質プレハブが坪51.8万円、鉄骨が坪53.9万円となっていました。

在来工法による施工業者は、住友林業などの大手ハウスメーカーから零細工務店までありますが、木質プレハブの施工業者は、ある程度の規模以上のハウスメーカーに限られます。そのような条件で、再建築可能な標準的な坪単価を算出して、在来工法に比べて木質プレハブが高いというのも不公平な感じもします。

工法の違いを査定価格に反映するぐらいなら、建築家がキチンとデザインして施工管理した家かどうかも反映すべきように思いますが、そうなってはいません。同じ在来工法であれば、住友林業が建てた家も、無名の工務店が建てた家も、施工業者のブランド価値が査定価格に反映されているわけではないのです。

査定価格算出で大きなパラメータは、内外装の材料や住宅設備機器のグレード。それによって標準建築単価が適用される「標準住宅」のほかに、グレードの高い材料を使用した「高級住宅」とグレードの低い材料を使用した「実用住宅」の3段階に分けて査定することになっています。

大手ハウスメーカーの家でも、零細工務店がつくった家でも、査定価格は工法と材料のグレードで決まる—。そうであるのなら、住宅の価格は「材料費」と「工賃」を分離した形で積算した「材工分離」の価格で判断するしかない、という当たり前の結論に行き着くことになるのです。

筆者にメールを送信する