A-Style 家づくりの経済学  69
家づくりの経済学
家づくりの経済学(69) 材工一式と材工分離(1)

住宅リフォーム詐欺事件をきっかけに住宅リフォームについて考えてきましたが、行き着くところはやはり住宅の価格の問題なのでしょう。

新聞報道によれば、高齢者の方が総額で数千万円ものリフォーム費用を請求されたケースもあったとか。確かに、こうした極端な事例は少ないでしょうが、そもそも、住宅リフォームに「どれぐらいの費用がかかるのかが判らない」という声もよく聞きます。新築する場合でも「どれぐらいの費用をかけたら良いのか」で迷っている方もいるでしょう。

それほど価格が判りにくい商品の値段を、消費者はどのように判断してきたのでしょうか?

新築の場合は、リフォームと違って建築の専門知識がなくても大体の価格を算出できる「坪単価」があります。わが国では、この坪単価が、新築住宅の価格を考えるときの目安として、広く利用されてきました。実際のモデルハウスをいろいろ回るときも、坪単価で比較しながら見ている人も多いのではないでしょうか?

かつて私も自動車担当記者を経験しましたが、それまで自動車のことなど全く興味がなく、知っている車の名前はカローラとクラウン、ブルーバードだけ。それでもいろいろ車を乗り比べて1年もすれば、さすがに自動車の価格の違いが感覚的に判ってきました。

価格が安いか、高いかを判断できるのは、モノやサービスに対する相場観を持っているからと言えるでしょう。厳密に言えば、等級(グレード)ごとの相場観と言えるものです。同じ自動車でも、カローラとクラウンではグレードが違うわけですから、同じ車でも値段が大きく異なることに誰もが納得しますが、グレードがほぼ同じような車で値段に開きがあれば、高い、安いとの反応が自然と出てきます。

最近の住宅価格も、坪単価で20万円台のものから、100万円を超えるものまで実に様々です。自動車と同様に、グレードが違えば価格は違うのは当然ですから、坪単価50万円の家が高いのか、安いのかではなく、平均的な坪50万円の家と比較して、どのような材料や設備が使われているのか、造作や建具の仕上げがどうなのか、などを見て判断するしかありません。

建築の専門家の方々には顰蹙(ひんしゅく)を買うかもしれませんが、新築住宅の坪単価とグレードの関係を、私の独断と偏見で自動車に例えて区分けをしてみると、こんな感じになるように思うのですが、いかがでしょうか?

●坪単価30万円以下=軽自動車(100万円以下)

●30万円以上=小型車1(ヴィッツ、カローラ=100万円台前半)

●40万円以上=小型車2(プレミオ=200万円前後)

●50万円以上=中型車1(カムリ、ノア=200万円台)

●60万円以上=中型車2(マークX、エスティマ=300万円台)

●80万円以上=大型車(クラウン=400万円以上)

●100万円以上=高級車(セルシオ、レクサス=500万円以上)

(最近の車種は詳しくないので、最もポピュラーなトヨタ車で統一しました)

私の知り合いの建築家にも「お金をかければ、良い建築ができるわけではない」という言い方をする人もいますし、ひとつの仮説として考えていただければと思います。

30代前半で年収500万円の方が住宅を建てる場合、これまでに紹介した定説のひとつ「年収の5倍以内」に当てはめて考えれば、総額で2500万円。うち半分を土地代、半分を建築費とすると、家は1250万円となり、30坪(99平方メートル)の家を建てるのなら坪単価42万円、40坪(132平方メートル)の家なら坪単価31万円という計算ができます。

年収1200万円の方なら、同じように計算して40坪の家で坪単価は75万円。このくらいの年収があれば、乗る車もクラウンクラスでしょうから、家の坪単価と乗る車のグレードには相関関係があるとの仮説もまんざら的外れとも言えないでしょう。

問題は、先ほども指摘したように坪単価50万円で建てた家に、本当に坪50万円の価値があるのかどうか。この判断で消費者は迷うのでしょう。

モデルハウスで坪単価を尋ねて「50万円」という答えが返ってきたとしても、見た感じで50万円が妥当なのかどうなのかが判らない。デザインやインテリアの好き嫌いは別として、他メーカーの坪50万円の家と、どちらが“お値打ち”なのかが判らない。

住宅の価格が判りづらくしている原因は、ここにあるように思うのです。

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