A-Style 家づくりの経済学  64
家づくりの経済学
家づくりの経済学(64) 消費税を考える(3)

「住宅も消費税問題から逃げられない」—。前回のコラムでそう書きましたが、実は消費税がかかっていない“住宅”があるのをご存知でしょうか?
正解は「個人が所有している中古住宅」です。つまり、個人から直接、中古住宅を購入する場合には、建物には消費税はかかりません。消費税がかかる住宅とかからない住宅、この違いが日本の住宅市場に今後、いろいろな影響を及ぼす可能性があると思うのです。

消費税は、法人・個人事業者がモノやサービスを事業として対価を得て行う取引で発生する税金です。その原則に当てはめれば、個人が居住用住宅や自家用車を売却するのは事業目的ではありませんから、消費税がかからないことになります。この基本的な仕組みは、消費税率が引き上げられることになったとしても、変わらないでしょう。
さらに、現在は消費税の非課税品目として17品目が指定されており、「土地の譲渡と賃貸料」、「住宅の賃貸料」にも消費税はかかっていません。今後、消費税問題の論議の中で、これらの非課税品目の見直しが行われる可能性も考えられます。
ただし、土地の譲渡・所有に対しては、これまでも登録免許税や不動産取得税、固定資産税、譲渡所得税など様々な税金がかけられてきたわけで、さらに消費税率アップとなれば、不動産関連税制の全面見直しが避けられないでしょう。
私見ですが、消費税論議と合わせて、そこまで踏み込んで議論するのは難しいと思われるので、土地の譲渡と賃貸料、住宅の賃貸料は引き続き非課税の扱いになるのではないかと予想しています。

中古住宅の売買について考えてみることにしましょう。
土地が2000万円、建物が800万円の計2800万円で売りに出されている戸建て木造中古住宅のケースを想定します。
売主が個人である場合、買主は売主に売買代金2800万円を払うだけで、あとは不動産仲介業者への不動産仲介手数料(最大:取引価格×3%+6万円)、登録免許税の税金や司法書士・土地家屋調査士手数料などの必要経費がかかります。
仲介手数料は最大で計算して90万円ですが、これには消費税がかかるので、94.5万円となります。必要経費でも司法書士手数料などには消費税がかかりますが、ここでは細かい計算は省いてα円とすると、買主が支払う総額は、2894.5万円+αとなります。
一方、個人の売主には、2800万円がそのまま入ってくるわけですが、はやり不動産仲介手数料を支払わなければならないので、差し引き2800万円−94.5万円=2705.5万円となる計算です。

売主が不動産会社などの事業者の場合を考えてみます。
買主は、売主に売買代金2800万円に、建物800万円に対する消費税5%=40万円を負担する必要が生じます。不動産会社から直接購入すれば仲介手数料はかかりませんが、不動産会社が売主の場合でも客付け仲介業者を間に入るケースがほとんどです。仲介手数料+消費税の94.5万円が加わると、買主が支払う総額は2934.5万円+αとなります。
一方、買主である不動産会社には2800万円+消費税40万円が入ってくるわけですが、その中古住宅の仕入れ価格(買い取り価格)は、せいぜい販売価格の8割程度と思われます。個人売主にとっては、売れ残りリスクがない分、買い取り価格は低くなるわけです。

同じ販売価格の中古住宅でも、個人から買うのと、不動産会社から買うのでは消費税の分、値段が違っていたのです。しかし、これまではその違いがあまり意識されてきませんでした。売主が事業者であれば、中古住宅の品質チェックを行い、瑕疵も少ないでしょうから、消費税5%程度であれば、そのメリットでカバーされていたという面があったかもしれません。
しかし、消費税が10%に引き上げられると、さすがに事情は変わってくるのではないでしょうか?
事例として挙げた戸建て木造中古の場合でも、不動産会社から購入すると建物の消費税が80万円に増え、仲介手数料90万円に消費税9万円が加わって、総額は2979万円になってしまいます。
土地よりも建物の価値が高いマンションの場合には、消費税率アップの影響はさらに大きくなります。土地1200万円、建物1600万円の総額2800万円の中古マンションで考えると、消費税は160万円、これに仲介手数料を加えると総額は3059万円。販売価格が何と1割近く増加することになります。

消費税率アップでまず影響を受けるのは、中古住宅流通でしょう。中古の優良物件を購入する場合には「個人売主から」との買主のニーズが一段と高まり、その解決策としてインターネットの不動産オークションがようやく日本にも普及・定着する。そんな予想もできるでしょう。
個人売主にしても、不動産業者に安値で買い叩かれるより、高値で売れることが期待できるわけで、優良物件であればあるほど、高値で買い取ってくれる個人買主を求めて、ネットオークションに出品する個人売主が増えてくるのではないでしょうか?
そこで問題になるのが、中古住宅の品質リスクをどうカバーするか。個人間の売買では相手に瑕疵を問うのは難しいところですが、国土交通省が2002年12月に導入したものの、まだほとんど利用されていない中古住宅の住宅性能表示制度が活用され始めるでしょう。
制度を利用するには当然、費用がかかりますが、80万円もの消費税を払うことを考えれば、十分に元が取れるサービスが実現するはずです。

さらに注目したいのは、中古住宅に一段と割安感が出てくるのではないかということです。日本人は新築好きで、中古は売れないと言われ続けてきましたが、さすがに10%もの消費税を払い続ける余裕はなくなってくるのではないでしょうか?これまで十分に活用されてこなかった中古住宅ストックが、消費税率アップで生き返ってくる—そんなシナリオが考えられると思うのです。

筆者にメールを送信する