A-Style 家づくりの経済学  63
家づくりの経済学
家づくりの経済学(63) 消費税を考える(2)

消費税問題について、論点整理をしておくことにしましょう。建築主の方はもちろん、建築家や工務店など事業者にとっても影響が大きいと予想されるだけに、消費税の基礎知識を、様々な角度から整理しておくことは必要不可欠だと思われます。

先日、私が参加している住宅・不動産問題に関するジャーナリストの勉強会でも、消費税の話題が取り上げられました。講師は、不動産協会などで20年以上、税制問題について取り組んできたエキスパートの方でしたが、改めて実感したのは、消費税問題が住宅産業にとって大きな転換点になる可能性があるということです。

消費税率引き上げは、その分、モノ・サービスが値上がりするわけですら、消費者が反対するのは当然ですし、消費を冷やすことを懸念する企業の多くも反対することになるでしょう。企業にとっては、消費税のアップ分を価格に転嫁できずに、収益が圧迫されるとの懸念もあります。
過去を振り返ってみても、1989年4月に消費税が初めて導入されたときには、直後の参議院選挙で自民党が大敗しましたし、97年4月に消費税率3%から5%に引き上げたときでも、すったもんだがあったわけで、一筋縄ではいかないのが消費税問題です。
「住宅を対象とした消費税率引き上げは、あまりに影響が大きすぎて無理ではないのか?」—内心、そう楽観的に考えている方も少なくないかもしれません。
現在の消費税率5%ですら、建物の値段が2000万円なら消費税は100万円、3000万円なら150万円かかっているわけで、これが7%に上がれば、それぞれ140万円、210万円となり、もし10%なら200万円、300万円となる計算です。消費税のために、住宅ローンの借入額を増やさざるを得なくなるのは確実です。
もし、消費税率がアップすることが決まれば、消費者は当然、税率アップする前に駆け込みで住宅を購入する動きに出るでしょうし、その後の反動減で住宅需要の長期低迷は避けられなくなります。
住宅メーカーや工務店など住宅関連業界にとってはまさに死活問題。景気にも大きく影響するわけですから、「住宅の消費税率アップなど実現できるはずがない」と思いたくなる気持ちも判らないではありません。

しかし、消費税の仕組みを考えた場合、住宅だけを税率5%に据え置いたり、他の品目と税率を変えたりするのは非常に難しいようなのです。
消費税の納税義務者は、モノやサービスの提供を行う「事業者」ですが、最終的に負担するのは「消費者」となります。
工務店A社が大手デベロッパーB社から発注を受けて1600万円の建売住宅を作る場合を考えてみると、木材業者やシステムキッチンなどの設備業者などから木材・資材を1000万円で購入するときにも、仕入れ消費税5%=50万円がかかるので、合計1050万円で仕入れることになります。
これに人件費や機械損料、利益などA社のマージンを600万円上乗せするときにも、600万円×5%=30万円の消費税を、A社は納税する義務が生じることになります。B社は、1600万円の建売住宅を発注しても、50万円+30万円=80万円の消費税が加わった形で仕入れることになります。
さらにB社は、土地の開発費用や販売経費などのマージン400万円をプラスして消費者に販売するときには、同様に400万円×5%=20万円の消費税が加わり、最終的には2000万円の建売住宅(土地代は含まず)を購入する場合に、50万円+30万円+20万円=100万円の消費税を「消費者」が負担するという仕組みです。
こうした「転嫁のメカニズム」を通じて、2000万円の住宅を5%=100万円の消費税を最終的に消費者が負担することになるわけです。
ちなみに、B社が消費者から消費税分100万円を受け取って、20万円だけを納税、80万円は仕入れ段階で負担していると見なすのを「仕入れ税額控除」と言います。

もし消費税が10%に引き上げられることになっても、住宅だけは5%に据え置こうとするとどうなるでしょうか?
住宅をつくるための木材・資材は、住宅ではありませんから、10%=100万円の消費税がかかることになります。工務店A社も、直接居住者に売るわけではないので、10%=60万円の納税義務が発生します。つまり、デベロッパーB社は160万円の消費税が転嫁されて1600万円の住宅を仕入れているわけです。
最後に、B社が消費者に住宅として販売するときだけ消費税率が5%に軽減され、消費者は100万円しか消費税を負担しないとなると、B社は60万円分、自らの利益を圧縮して納税しなければならない計算となってしまいます。
これでは、誰も納得しません。結局は、川上に遡って木材・資材など全てを5%に軽減する必要が生じてしまいます。しかし、鉄筋ひとつとっても、ビル用、店舗用は10%で、住宅用だけを5%にして取引するなど、そう簡単に出来る話ではありません。
かつて売上税が議論された時にも、反対論を抑えるために生鮮食品だけは、非課税にするという案が出たようですが、例えば魚を非課税にすると、魚を取る網も、漁船も、さらに燃料までも非課税にせざるを得なくなって、売上税の導入断念の一因になったとか。
英国でも、レストランで食事を取るときは通常の税率で、食材の購入には軽減税率が適用されるため、マクドナルドでハンバーガーを買うときには、誰もが「テイクアウト!」と答えて軽減税率の適用を受け、受け取るとその場で食べるというスタイルが定着したという話も聞きます。

どうしても軽減税率制度を導入しようとすると、現在は領収書などで「仕入れ税額控除」を認めている制度を改めて、EU(欧州連合)のようなインボイス方式(付加価値税額を別記した税の領収書)を導入する必要があるとも聞きます。
しかし、インボイス方式は、税務当局に商取引の実態を明確に把握され、手続きなども繁雑化するのは避けられないでしょうし、インボイスを発行できない中小免税業者は商取引から排除される懸念も出てきます。
小泉首相は、2007年度には消費税を含めて税制を抜本的に見直すという方針を打ち出しているわけですが、人生最大の買い物である住宅も、消費税問題からは逃げられないと思われるのです。

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