A-Style 家づくりの経済学  61
家づくりの経済学
家づくりの経済学(61) 住宅基本法って何?(1)

「住宅基本法」(仮称)という新しい法律をつくる準備が始まっていることをご存知でしょうか?今年秋までには法律案が書かれ、来年1月から始まる通常国会で審議されることになる見通しです。もう1年もしないうちに国会を通過し、来年4月には施行されていることになるでしょう。
「住宅基本法」とは文字通り、日本の住宅政策の根幹に位置付けられることになる重要な法案です。誰もが持ち家と賃貸の違いはあっても、住宅に住んでいるわけですから、国民に最も身近な法案と言えるかもしれません。それにも関わらず、多くの国民は「住宅基本法」なる法案が検討されていることもほとんど知らない。果たしてそれで良いのでしょうか?

この連載コラム「家づくりの経済学」は、居住者の方々にも家の資産価値という経済的な視点を加えて家づくりを考えていただきたいと思いながら、執筆を進めてきました。
わずか20年で減価償却されるような家づくりが、いかに経済的視点から見ても非合理であるか?居住者がそのことを認識することで、長く住み継がれていく家づくりが増えていくと考えたからです。
家そのものの資産価値が適切に評価され、中古住宅が活発に流通する住宅市場を整備していく。実は「住宅基本法」の考え方も、「市場重視・ストック活用」の方向へと舵を切ろうとしているという点では共通しているのです。
問題は、それを実現する方法論です。実際に住宅を維持管理しながら、住み継いでいくのは居住者自身のはずですが、当事者である居住者=国民にほとんど知らせることなく、日本経団連を中心とする経済界、政府・与党、そして国土交通省だけで議論が進んでいる。そこに、何らかの意図が働いていないのかを懸念するのです。

家は、絶えず風雨にされされ、熱さ寒さにも耐えて、居住者を自然から守ってくれます。当然、時間を経ていくことで、家のあちらこちらに痛みが出てきます。自然の中で木材の腐食やコンクリートの劣化などが避けては通れないのは、誰もが判っていることでしょう。
それでも、日本では、家のメンテナンスが十分に行われず、経年劣化するのに任せるような住み方がされてきました。負担の重い住宅ローンの返済に追われ、「家を新しく建てることは、居住者にとって切実な問題だが、多少汚れたり、痛みが出てきたりしても、雨漏りなどの実害が出ていない限り、リフォームの優先順位は低い」(某リフォーム事業者)というのが実情だったのです。
常識的に考えれば、居住者のメンテナンスに対する意識を高めることなしに、住宅が長く住み継いでいくことなど不可能であるように思えます。もし、居住者の意識を変えることなく、住宅が長く住み継がれていくような市場を形成しようとすれば、居住者以外の第三者が住宅のメンテナンスを行い、それによって資産価値を保証するような制度をつくる以外に有効そうなアイデアは思い浮かびません。

分譲マンションでは、居住者による管理組合が組織され、管理会社と契約して第三者を加えた計画的な住宅のメンテナンスが行われています。そのために居住者は、住宅ローンの返済に加えて、管理費と長期修繕積立金を毎月支払っているわけです。
マンションのような区分所有では、居住者の誰か一人でも管理費や積立金を支払わなければ全体の利害に発展するため、居住者全員がメンテナンスに対する意識を共有することも可能だと言えます(とても大変だという話も聞きますが…)。しかし、戸建て住宅で、マンションと同じような仕組みをつくるのはほぼ不可能でしょう。
戸建て住宅の解決策としては、ここ数年、ハウスメーカーを中心に、長期の定期点検プログラムを導入するところが増えてきています。ロングライフ住宅を売り物にしている旭化成ホームズが99年に50年間の長期点検プログラムを導入しのが最初だったと記憶しています。

ハウスメーカーが定期点検を行い、メンテナンス状況を把握できれば、中古住宅に品質保証を付けることも容易になります。すでに旭化成ホームズが自ら建てたヘーベルハウスを買い取り、品質保証を付けて再販するビジネスを展開していますが、住宅を建てた後も、定期点検をしてくれて、売りたい時は買い取りまでしてくるのですから、まさに至れり尽せりサービスです。
しかし、こうしたビジネス手法も、資金力の豊かな大手ハウスメーカーだから可能なこと。地場の中小・零細工務店に買い取りまでは要求するのは酷でしょう。つまり、居住者が家の資産価値に目を向け始める一方で、面倒なメンテナンスは第三者に任せる人が増えるという展開は、大手にとって都合の良いシナリオであるように思うのです。
最終的には、自ら買い取りにも応じる大手ハウスメーカーの住宅と、中小・零細工務店の建てた住宅とで、中古住宅の流通価格で、はっきりとした格差が生じることを期待しているかもしれません。

もちろん、そのようなサービスを居住者が望むことを否定するつもりはありませんが、いくら大企業でも10年後に存続している保証があるわけではないでしょう。受注者にとって、何から何まで“丸投げ”してくれる発注者ほど美味しい商売相手はいない、というのも一般的に言われていることです。
「メーカーの長期定期点検まで付いているから安心だ」—そんな考え方が、住宅を長く住み継いでいくうえで本当に良いことなのか?家づくりと同様に、家のメンテナンスも居住者が主体的に行っていくとの意識こそが重要だと思うのです。

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