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家づくりの経済学
60
家づくりの経済学(60) 税金の話(3)
今年4月、「住宅借入金等特別控除」(住宅ローン控除)制度で、住宅投資を促進するための見直しが実施されたことをご存知でしょうか?
前回のコラムで、税制から見た政府の住宅投資に対するスタンスは“中立”に戻りつつあると指摘しましたが、今回の見直しは新築ではなく、中古住宅を対象としたものです。
住宅ローン控除は、新築住宅だけでなく、中古住宅とリフォーム工事にも適用されますが、これまでかかっていた中古住宅の築年数制限(耐火建築物25年以内、非耐火建築物20年以内)が原則として撤廃されることになりました。耐震性能などの一定の条件を満たしていれば、極端な話、築100年の中古住宅でも控除が受けられるようになったのです。
中古住宅の査定方法はこれまで、築年数に比例して木造の場合は二十年でほぼゼロとなるような方法が取られてきました。連載コラムの(5)や(7)で詳しく紹介していますのでご覧いただければと思いますが、中古住宅として市場に流通しているのはせいぜい築15年以内の物件がほとんど、主流は10年以内の築浅物件だと言います。
それらの物件であれば、これまでも問題なく、住宅ローン控除を受けることができました。例えば、新築時に土地2000万円、建物2000万円、総額4000万円の木造住宅の場合、地価は横ばい、建物は平均的な坪単価で建てられたと仮定すると、15年後の査定価格は、土地2000万円、建物650万円の計2650万円程度と推定できます。
この査定価格と同じ金額で売買が成立し、買主が350万円のリフォーム工事を行ったとすると、住宅取得総額は3000万円。2割の600万円を頭金として用意して、残り2400万円を住宅ローンでまかなうとすると、リフォーム工事代金を含めた2400万円の借入金年末残高が住宅ローン控除の対象となるわけです。
中古住宅が、築30年の場合はどうなるでしょうか?
建物の手入れも行き届いていて耐震補強も行われ、あと20年ぐらいは住み続けて全く問題はない物件であれば、買主も「まず300万円ぐらいかけてリフォームし、10年ぐらい過ぎてから建て替えを検討しても遅くはないか…」と考えるかもしれません。
しかし、築30年となれば、建物の査定価格はほぼゼロ。住宅流通市場に出てくるときには、「中古住宅」ではなく、「古家付き土地」という扱いとなり、税制上では“住宅”と見なされていなかったのです。
住宅ローン控除は、自己の居住用住宅を取得したり、リフォームしたりする時に、返済期間が10年以上の長期住宅ローンを利用した場合に適用される制度。あくまでも対象は“住宅”であって、土地だけでは控除を受けることはできない仕組みです。
築30年の古家を、土地の資産価値に応じた価格2000万円で購入して、そのまま古家を工事費300万円でリフォームして住むとなると、やはり2300万円もの費用がかかることになります。当然、ローンを組もうという人も多いでしょうが、税制上は“住宅”ではないので控除を受けられないという不平等が生じていました(リフォーム工事費の300万円分だけは控除が受けられる可能性はありますが…)。
築20年超の古家が、住宅ローン控除の対象にならないという以前に、住宅ローンの融資対象外だったという問題もありました。ローンの対象にならないのですから、住宅ローン控除の対象にならないのは当然と言えば、当然だったのです。
住宅金融公庫の直接融資でも、1997年ごろまでは中古住宅ローン(リ・ユース住宅ローン)の対象は築15年以内に限定されていたほどです。それを耐震診断と劣化診断を受けて合格することを条件に、築年数制限が緩和されてから、まだ10年も経っていません。
さらに住宅金融公庫が、新たな主力商品として力をいれている「フラット35」でも当初は、10年という築年数制限が設けられていました。その築年数制限が撤廃されたのも、今年1月のこと。まだ、ご存知でなかった人も多いのではないでしょうか?
これまで住宅ローンと税制の両面から“住宅”として扱われてこなかった築20年超の古家が、耐震性能などの品質・性能の条件をクリアすれば、“住宅”として流通できるようになる制度基盤がようやく整ったと言えます。
実際にどのように制度運用がされるのかは、実例を見ていく必要がありそうですが、風情のある街並みや景観を形成してきた古家を積極的に有効活用していくことを後押しするような制度になることを期待したいところです。
築100年の古い京都の町屋を、土地を含めて購入しリフォームして住みたい—そんな夢に挑戦する人たちを、積極的にバックアップするぐらいでも良いのではないでしょうか?
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