A-Style 家づくりの経済学  59
家づくりの経済学
家づくりの経済学(59) 税金の話(2)
住宅ローンを組んで住宅を取得した場合には「住宅借入金等特別控除」が受けられます。家づくりをする人のほとんどが利用する制度なので、ご存知の方も多いとは思いますが、改めて制度の仕組みからみてみることにしましょう。
住宅借入金等特別控除は、簡単に言えば、住宅ローンの年末残高の1%に相当する金額を所得税算出額から差し引いてもらえる制度です。控除される金額には上限が設けられていますが、住宅ローンの年末残高が2000万円残っていれば、1%に相当する20万円を所得税算出額から差し引いてもらえることになります。

サラリーマンAさん(年収800万円)が年収の5倍に相当する4000万円の家をつくる場合を考えてみましょう。家族は専業主婦の奥さんと小学校の子どもが2人。頭金2割を用意して残り3200万円を年利3%(固定)の35年元利均等返済の住宅ローンでまかなうケースで考えています。
少々、くどくなりますが、所得税算出額から求めてみましょう。※の数字は、おおよその金額を記入しています。
◆800万円(給与・賞与)−200万円(給与所得控除)−70万円※(社会保険料)−38万円(基礎控除)−38万円(配偶者特別控除)−38万円(配偶者控除)−38万円×2(扶養控除)−5万円※(生命保険料控除)−1万円※(損害保険料控除)=334万円(課税対象所得額)
◆334万円(課税対象所得額)×20%−33万円=33.8万円(所得税算出額)
住宅借入金等特別控除は、この所得税算出額から直接差し引くことになります。住宅ローンの年末残高が2000万円なら、1%に相当する20万円を差し引いて年税額は13.8万円になります。さらに、現在は20%の定率減税(来年から圧縮されると言われていますが…)が適用になっているので、13.8万円−13.8万円×20%=11万円(所得税年税額)という計算となるわけです。
次に、Aさんの場合の控除額を、前回掲載した居住年の違いによる控除額の表に当てはめて計算してみましょう。



小渕内閣時代に打ち出した99年からの大幅減税が、いかに効果が大きかったかが一目瞭然です。形振り構わず、国民による住宅取得を促進しようと考えたのでしょう。
99年と言えば、金融機関への公的資金注入が行われ、不良債権処理が本格化した年でした。しかし、不良債権の担保不動産を処分するにしても、企業業績は低迷し、外資系投資家がバルクセールで買い叩く以外に、買い手がほとんど見当たらない状況。あとは、個人に住宅をバンバン買ってもらって土地を処分するしか方法がなかったわけです。
それまで住宅取得控除は、控除期間がわずか6年間で、限度額も年20万円程度だったと記憶しています。それと比べると、最大控除額を一気に3倍以上に引き上げたわけですから、前例がないほどの思い切った景気対策で、政策的な効果も大きかったのは確かです。
しかし、01年6月までの措置は、あくまでも例外的なもので、当初の目的が達成されれば従来の住宅取得控除制度へと戻すことになっていました。ただ、一気に戻してしまうと、居住年の違いによる格差があまりに大きくなってしまうため、経過期間を設けて段階的に元に戻しているところなのです。
08年いっぱい、10年間の税額控除を受けられることが決まっています。09年以降は、従来の6年の戻すかどうかがいずれ議論されるでしょうが、現状では個人の住宅投資に対する政府の姿勢は“中立的”と見て良いでしょう。
もちろん、Aさんが今年中に住宅を取得すれば270万円の控除が受けられ、来年に延ばせば247万円で23万円少なくなるのは確かです。その翌年に延期するなら70万円、さらに翌年なら110万円もの違いが出てきます。
「それだけあれば、大型薄型テレビが買える」と思うのか、「一生の買い物だから、悔いを残したくない」と考えるのか。誰しも、控除額が大きいと得した気分になり、少なくなってしまうと損したよう気分になるものです。
しかし、忘れていけないのは、控除額が大きいのは、それだけ巨額の住宅ローンを背負っているということ。住宅取得控除を多く受けることを考えるより、まず自己資金を増やして住宅ローンの借入額を減らし、返済期間も短くして金利負担を減らすことを考えるのが先決です。
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