A-Style 家づくりの経済学  56
家づくりの経済学
家づくりの経済学(56) フラット35の話(2)
住宅ローンを利用するとき、消費者にとって最大の関心事は「金利」でしょう。ある意味、金利は一般商品の「値段」に相当するものです。金利が低ければ低いほど、住宅ローン商品の「値段」が安いことになるわけですが、その値段=金利はどのように決まっているのでしょうか?商品の値段、例えば家電製品を考えてみましょう。一般的には原材料費、労務費、工場などの設備投資の減価償却費などを合計した「売上原価」に、本社経費などの間接経費を合計した「一般管理費」、製造した商品を販売するための広告宣伝費などを合計した「販売費」、最後に営業活動に伴う利潤である「営業利益」を加えて決定されています。住宅ローンの金利も、基本的には同じ。住宅ローンとして貸し出す資金を調達するコストは原材料費などの「売上原価」ですし、住宅ローンを支店やローンセンターなどを通じて販売するコストは「販売費」、本社経費など全体を管理するコストは「一般管理費」ということになります。

従来の住宅金融公庫の住宅ローンは、財務省の資金運用部から提供される資金の利率(財投利回り)に、住宅金融公庫の一般管理費や販売費などの経費を加えて「金利」が決まるという単純な構図でした。国債市場の動向などに応じて財投利回りの設定が変わると、住宅金融公庫の金利もそれに連動して変化するという仕組みです。この財投利回りは固定金利なので、住宅金融公庫でも長期固定金利の商品が提供できたわけです。ただ、バブル崩壊後の超低金利時代となって、80年代に 4%、5%という金利で借りていた人たちが一斉にローンの借り換えを行い、大量の繰上げ返済が発生。財務省から借りた資金の利回りは高いまま、住宅金融公庫の金利収入は減る、いわゆる“逆ザヤ”状態となって損失が生じ、結果として税金で穴埋めするという問題もありました。一方、銀行の住宅ローンの場合、原材料に当る資金は短期の預金が中心です。現在、普通預金の利率は0.002%、大口定期も5年が0.13%、10年でも 0.24%という水準ですので、原材料費は非常に安くなっているわけですが、市場金利が上昇すれば、すぐに売上原価に跳ね返ってくる可能性もあります。この金利変動リスクを消費者側が負担するのが、金利変動型住宅ローンです。銀行としては金利変動リスクを持つ必要がないので、現在の安い資金調達コストを反映した「予定価格」を値段として表示すればよいわけです。こうして金利の仕組みを考えると、金利固定型と金利変動型は、同じ住宅ローンであっても全く性質が異なる商品であることが理解できます。金利固定型は、普段、商品を買うのと同じで、最初に「値段」が決まっているわけですが、金利変動型は最初の値段はあくまでも「予想価格」であって本当にその値段で買えるかどうかは誰も判らないのです。

昨年12月、全国銀行協会が「住宅ローン利用者に対する金利変動リスク等に関する説明について」との申し合わせを行ったことをご存知でしょうか?「金利変動リスクの怖さを消費者に十分に周知徹底しないままで、銀行が住宅ローンを提供しているのは問題ではないか?」との批判が国会審議などの場でも強まったことに対応した措置のようです。いわゆる「説明責任」を果たそうということなのでしょう。ただ、申し合わせが行われて1カ月以上が過ぎましたが、金利変動リスクを啓蒙普及しようという動きが強まっているという話はあまり聞こえてきません。金融機関のホームページを見ても、金利固定型と金利変動型の違いを金利変動リスクなどの視点でキチンと解説しているところは、まだ皆無と言える状況です。

さて、本題である住宅金融公庫の新型ローン「フラット35」の金利ですが、金利決定のメカニズムは基本的には同じです。原材料費などの原価は、住宅金融公庫が投資家に住宅ローン債券を証券化して販売するMBS(モーゲージ・バックド・セキュリティーズ)の利回り(A)が相当します。これに、証券化業務を行う住宅金融公庫の経費や利益となる利回り(B:一般管理費に相当)と、住宅ローンを販売する民間金融機関の経費や利益となる利回り(C:販売費)が上乗せされたものが、住宅ローンの金利=値段となるわけです。ちなみに利回り(C)は「サービシング・フィー」と呼ばれます。MBSの利回り(A)は2月適用分では1.7%、利回り(B)は証券化の方法の違いで0.8%または0.9%の二種類があります。利回り(C)は、民間側の判断によって自由に決めることができ、2月時点では平均0.42%となっています。同じ「フラット35」でも、金融機関などによって金利が異なっているのは、この利回り(C)がそれぞれ違ってくるからです。あまり販売経費がかからないところであれば、安く設定することも可能なわけで、企業努力によって競争が発生する部分であると言えます。

さらに利回り(B)も、住宅金融公庫の企業努力によって下げることが可能な部分です。家電メーカーでも、自分のところの商品を販売店にたくさん売ってもらうため、卸売り価格を値引きする販売促進策を講じることは良くある話ですが、住宅金融公庫でも昨年12月から今年5月までの半年間をキャンペーン期間に設定して、利回り(B)のディスカウントを実施し始めました。 フラット35の販売実績の多い金融機関、また企業努力によって利回り(C)を低く設定している金融機関に対して、その努力に応じて利回り(B)を最大0.4%引き下げるというインセンティブを与えることにしたのです。この2月までに「フラット35」を取り扱っている金融機関は、195機関となっていますが、融資金利は最低が2.23%(段階金利なし)、最高は 3.60%。1%以上もの大きな開きが生じているのは、こうした理由があったわけです。消費者にとって、気になるのは、今のキャンペーンが終了した後のことでしょう。このままでは融資金利が一気に0.4%も上昇する可能性もあります。住宅金融公庫でも、何らかの対応策を検討中のようですので、その辺の情報をウオッチしながら、どのタイミングで利用するのかを判断することが重要かもしれません。
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