HOME
|
会社概要
|
サイトマップ
|
お問合せ
A-Style
家づくりの経済学
55
家づくりの経済学(55) フラット35の話(1)
住宅金融公庫の新型ローンを取り巻く状況が、ここ2カ月の間にすっかり様変わりしてきました。新型ローンの名称も「フラット35」に決まり、これまで低迷してきた融資高もようやく伸び始めてきたようです。
この連載コラムで、新型ローンの必要性を認めてきた私としては、追い風が吹き始めたことを前向きに評価したいところですが、あまりに突然、風向きが変わったことに正直、驚いている面もあります。その辺の事情も含めてフラット35に関する最新情報を整理しておくことにしましょう。
この連載コラムでも、証券化ローンの話題をこれまでも何度か取り上げてきました。住宅金融公庫でも当初は証券化ローンと言っていましたが、“証券化”という言葉が一般の人には馴染みが薄いことから「新型ローン」という呼び方に変え、さらに今回「フラット35」という愛称を付けて普及を図ろうという作戦です。
証券化ローンは、米国で仕組みが構築され、発達してきた商品です。日本語では“抵当”と訳される「モーゲージ」が、米国では「住宅ローン」を意味する言葉として使われるほど、住宅ローンに証券化の仕組みが取り入れられています。
この「モーゲージ」という言葉も、数年前から持ち家を担保にして老後の資金を受け取る「リバース・モーゲージ」の話題が取り上げられるようになって、ご存知の方も増えているのではないでしょうか?直訳すると「住宅ローンの巻き戻し=逆・住宅ローン」という意味になるわけです。
このほかにも、証券化ローンの説明では「モーゲージ」という言葉が多くでてきます。住宅ローン専門金融業者(ノンバンク)のことを「モーゲージ・バンク」、住宅ローンの仲介業者のことは「モーゲージ・ブローカー」、住宅ローン債券を証券化したものを「モーゲージ・バックド・セキュリティーズ(MBS)」などがあり、ちょっと記憶に止めておいてください。
さて、従来の住宅ローンと証券化ローンの違いは、融資するお金の調達方法にあります。お金を借りる側からすれば、どうでも良い話のように思うかもしれませんが、住宅ローンは何千万円という高い買い物です。基本的な仕組みは知っておいて損はありません。
従来の住宅ローンでは、融資する原資の大半は預金者の預金です。銀行が自ら集めた預金を住宅ローンとして貸し出しているわけです。しかし、預金はいつでも引き出せる短期的な資金ですから、これを長期間貸し出そうとすれば金利変動リスクなどが大きくなってしまいます。民間の金融機関が提供する住宅ローンに金利変動型が多いのは、そのためです。
住宅金融公庫の場合も、基本的には郵便貯金として集められた預金を貸し出してきたのですが、間に旧・大蔵省(現・財務省)の資金運用部が入り財政投融資として長期的に運用し金利変動リスクを吸収する形となっていたので、長期固定金利の住宅ローンの提供が可能だったと言えます。
話は、横道にそれますが、いまの通常国会の最大の争点となっている郵政民営化問題も、政府の財政投融資の問題がそもそもの発端。郵貯で集めたお金を使うのは悪くはなかったのでしょうが、赤字が生じるような使い方が増えて国の財政悪化に拍車をかける状況になったのが問題だったわけです。どんどんお金を使う側の日本道路公団や住宅金融公庫など特殊法人と、どんどんお金を集めてきてしまう郵便貯金や簡易保険をセットで改革しようというのが、小泉構造改革がめざしているものと言えるでしょう。
この郵貯がいずれ民営化されて財政投融資改革が進めば、住宅金融公庫が郵貯の預金を住宅ローンの原資としてそのまま使うことは難しくなります。そうなると別の方法で資金を調達しなければなりませんが、銀行と同じ従来の手法では、これまで提供してきた長期固定金利の住宅ローンを商品化するのは不可能です。
その解決策として導入されることになったのが、米国で発達した“証券化”という手法です。株式市場のように証券化によって投資家から直接、資金を調達するのと基本的な考え方は同じ。金利変動リスクを投資家に負担してもらうことで、米国では政府機関が直接融資をしなくても、長期固定金利の住宅ローン商品が提供されているのです。
消費者の立場から見れば、従来の住宅ローンも新型ローンも何ら区別せずに、融資条件などから自分に合った商品を利用して全く構わないわけです。
証券化ローンでポイントとなるのは、誰が投資家から資金を調達するか?
株式市場でも、格付けの高い優良な会社の方が有利な条件で資金調達できますが、住宅ローンの証券化でも、投資家の信用が高い方がより安く資金を調達できるからです。
住宅ローンの証券化は、住宅金融公庫でなくても、民間の金融機関でももちろん可能です。しかし、住宅金融公庫のような国の機関と、民間の金融機関を比べれば、やはり信用力は国の機関の方が高くなるのが一般的でしょう。安く資金調達する方法を突き詰めていけば、最も信用力の高い機関がまとめて証券化することになるわけで、米国でも政府系機関であるファニーメイ、ジニーメイが住宅ローンの証券化を行っているのも、そういう理由からのようです。
日本でも、証券化ローンを立ち上げるに当って、国の機関である住宅金融公庫がまとめて証券化による資金調達を行う仕組みを導入。その資金を使って消費者に住宅ローンサービスを提供するのは「民間」という役割分担で、新しい仕組みが整えられることになったわけです。
次にポイントとなるのが、誰が証券化ローンを消費者に提供するか?
これまで消費者が住宅ローンを借りるのは、銀行と相場が決まっていました。住宅ローンの原資が預金の場合、信用力の高い大手銀行の方が安い資金を多く集めることができ、住宅ローンの商品力も相対的に高かったからです。
しかし、証券化ローンでは、証券化を行う住宅金融公庫が資金を調達してくれるので、その資金を使えば資金調達能力がない銀行以外の企業でも住宅ローンを提供することが可能になります。住宅金融公庫から見れば、公庫の資金を使って住宅ローンを消費者にたくさん売ってくれる「民間」であれば、審査さえシッカリやってくれるなら、別に銀行でなくても構わないことになります。
さらには、販売を任せた「民間」が証券化ローンをいくらで売ろうと自由ということにもなります。従来の住宅金融公庫の住宅ローンは、国が直接融資する体裁となっていたため、融資業務を委託された銀行では“定価”でしか販売することが許されていませんでした。しかし、家電製品などを買う場合でも、同じ松下電器製のテレビを、ヤマダ電機で買うのと、町の電気屋さんで買うのでは、値段が違っているのが当たり前であるように、ようやく住宅ローンでも取り扱い機関の間で価格競争が生じる環境となったのです。
同じ「フラット35」の愛称で販売され始めた住宅ローンでも、取り扱い機関によって金利などが違っているのは、こうした理由からなのです。フラット35を利用する場合でも、どの「民間」を選べば良いのか?消費者にとっては、その当りの情報収集が今後、重要になってくると思われます。
筆者にメールを送信する