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家づくりの経済学
54
家づくりの経済学(54) 人口減少時代の住宅市場(2)
「今年の市場動向は、いかがでしょうか?」—経済記者として、こんな質問をいろんな方々にしてきました。質問する相手は、自動車メーカー、ITベンダー、住宅・不動産業者などさまざまですが、ほとんどは商品を消費者に売る供給サイドの人たちでした。
本来、記者も需要動向を聞くのであれば、需要サイドの消費者に聞くべきなのかもしれませんが、供給サイドの需要予測も、直近1年の需要動向であれば、あまり大きく外れることはなかったように思います。短期的な予想であれば、需要が伸びるか、減るかといった方向性ぐらいは見誤らないからでしょう。
それが、中長期的な予測となると、かなり信頼性にかけるという印象はありました。3年先、5年先の需要動向など、変動要因が多過ぎて当らないのも仕方がないとは思いますが、自分たちに不都合な要因を過小評価し、都合の良い方向にバイアスがかかりやすいからでしょう。
企業にとって成長は使命であり、厳しい予測をしずらい面もあります。とくに大量生産、大量供給のビジネスモデルで事業展開している大企業にとって、需要不足が深刻化する人口減少時代の需要予測を行うことは、非常に苦労するだろうと思うのです。
住宅市場について、供給サイドでは国土交通省が毎月発表する住宅新設着工統計をベースに議論されてきました。住宅生産は基本的に受注生産に近いわけですから、自動車のように生産台数(供給)と販売台数(需要)の間に大きなギャップが生じないからです。
自動車の場合は、国内新車販売台数年580万台に対して、中古車販売台数年530万台というように中古マーケットも発達していますが、住宅の場合、中古市場は新築の10分の1以下という状態が続いてきました。新設着工戸数が住宅需要の全体を表していると考えて支障がなかったわけです。
日本の住宅新設着工戸数は、バブル期の1987年から90年までは年間170万戸前後で推移。その後、一時的に落ち込んだもの、96年までは150万戸前後を維持してきました。しかし、不良債権処理によって企業のリストラが本格化した97年を境に、120万戸前後に落ち込み、その水準で推移しています。
住宅新設着工戸数も、実際に個人が投資する持ち家37万戸、マンション+戸建て分譲をあわせた分譲33万戸の計70万戸で、残り50万戸は賃貸住宅です。日本の持ち家比率は、ほぼ60%前後で推移してきましたが、新設着工戸数を見ても60%を維持する形で個人の住宅投資が続いてきているわけです。
個人の住宅投資は、バブル崩壊後もほとんど落ち込まずに、96年までは増加傾向が続いていました。87年から96年までの10年間は、持ち家が年50万戸前後で安定的に推移してきましたし、分譲はバブル前が20万戸台だったのが、96年以降続いているマンションブームで最近は30万戸台を維持しています。
ただ、97年以降は持ち家が、40万戸台から30万戸台へと減少。第2次取得層と言われる40代後半から50代が、バブル崩壊のよる地価下落で保有住宅の担保割れが生じて身動きが取れなくなり、住み替え、建て替え投資が冷え込んでいるためと説明されています。
「将来的には、年間100万戸を切り、80万戸程度まで落ち込むのではないか?」—住宅新設着工戸数について、かなり以前から住宅業界にも厳しい予測がありました。
国土交通省のシンクタンク、建設経済研究所が01年に公表した「建設市場の中長期予測」によると、新設着工戸数は2005年が年119万戸、2010年が103万戸、2015年が88万戸、2020年が76万戸へと減少し、持ち家比率も低下していくと予測しています。
ところが、住宅・不動産の業界関係者に聞くと、「団塊ジュニアが現在30代前半と、住宅取得時期に入ってきたので、活発な需要が期待できる」とか、「06 年から人口は減少し始めても、世帯数は2015年まで増え続けるので、需要はそれほど落ち込まないのではないか」といったかなり楽観的な声も聞きます。
こうした見方の背景には、日本では中古住宅市場が成長せずに、今後も住宅需要のほとんどが新設住宅着工に結び付いていくとの考え方があるのでしょう。果たして、日本の住宅市場の構造変革は、今後も起こらないのでしょうか?
新年早々、家づくりをしようとしている消費者からは「どうでも、いいですよー」(song byだいたひかる)と言われかねない住宅市場の話をさせていただいたのは、家づくりに“資産”や“投資”という考え方を取り入れていこうとした場合、消費者も市場に向き合わざるを得なくなると思ったからです。 最近では、インターネットを活用した株式投資が個人でも活発化しているようですが、株式市場の動きや、景気、為替の動向といった基本的な知識もなく投資を行っている人は少ないのではないでしょうか?
株式投資の場合は、短期間で売り買いを行うので、中長期的な市場動向までを見通す必要はないかも知れませんが、不動産投資の場合は株式投資より長いスパンでモノを考える必要が出てきます。
バブル崩壊後、政府は積極的に住宅投資を促進してきました。名目は景気対策でしたが、金融機関が抱えていた巨額の担保不動産付き不良債権を、国民に住宅投資という形で処理してもらうという“一石二鳥”を狙ってきたわけです。
その不良債権処理も、最終段階を迎えています。今年4月のペイオフ解禁を経て地方銀行での処理も進み、上場企業に減損会計が強制適用される2006年3月期で一区切りすることになるでしょう。それが終われば、2007年と言われる消費税の引き上げや社会保険制度の抜本的な見直しが始まることになると思われます。
個人にとって人生最大の“投資”である住宅の市場を、今後どう整備していくのか?その方向性を示さないままに、国民に住宅投資を続けさせることは、もう許されない時期に来ていると思うのです。
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