A-Style 家づくりの経済学  53
家づくりの経済学
家づくりの経済学(53) 人口減少時代の住宅市場(1)
明けましておめでとうございます。
「家づくりの経済学」を今年も、よろしくお願いします。

2005年がスタートしました。
今年は、住宅金融公庫法改正を控えて、住宅ローンにもいろいろな動きが出てくるでしょうし、住宅基本法の制定にむけた動きも活発化しそうです。日本の住宅政策も大きな転換期を迎えてようとしているのは確かでしょう。
果たして、日本の住宅市場が今後どのように変化していくのでしょうか?
中古住宅市場が充実した欧米のような市場構造へと徐々に移行していく可能性は高いとは思われるのですが、これまでの日本と欧米との市場構造のギャップがあまりに大きいため、どのようなプロセスをたどるのか、読みにくいのです。
先行き、どのような変化が起こるのか予想が難しい時期に、住宅すごろくが成立していたころの“定説”や“常識”に基づいて、家づくりを行って大丈夫なのか?「家づくりの経済学」では、一度、疑ってみる必要があると考えながら、執筆を続けてきました。
さらに、この連載コラムでは「夢のマイホームづくり」に、“資産”や“投資”といった考え方を加えることも提案してきました。増税や社会保険料の引き上げなど、将来の変化をみすえながら、投資リスクを意識したうえで家づくりに取り組む必要があるだろうと考えたからです。
今年も、住宅市場を取り巻く環境変化を、住宅ローンや税制などを中心に、できるだけタイムリーに取り上げていきたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。

さて、今年、最初の話題ですが、人口減少問題について少し、考えてみたいと思います。直接、家づくりには関係ないと思われるかもしれませんが、これから何かにつけ否応無しに向き合わされる問題となるはずです。
2005年の年末年始の新聞をみて驚いたのが、1面トップに少子高齢化や人口減少の問題をクローズアップした記事が多かったことでした。全紙をチェックしたわけではありませんが、日本経済新聞と産経新聞の2紙が揃って人口問題の企画連載をスタートしたほか、私の女房の実家、長野県で見た地元有力紙の信濃毎日新聞でも1面トップが人口減少問題でした。
人口問題は2—3年前あたりから注目され始め、ここに来て新聞でも大々的に取り上げるようになったわけです。年金改革や消費税引き上げなどの問題を通じて、人口減少問題にようやく真剣に向き合うようになってきたという印象です。
しかし、人口問題に対する日本人の感度は必ずしも良好とは言えなかったように思うのです。最近、ようやく注目されるようになったとは言え、昨年から続いている年金や高速道路での議論を見ても、政治家や官僚、大企業経営者たちの感度の鈍さは、相変わらずのように思えます。

私自身が、人口問題に興味を持ったのは、高校生のときですから、もう30年ぐらい前のこと。18世紀に英国から始まった産業革命によって次々に人口爆発が起こっていることに興味を持ち、英国、ドイツ、米国、日本などの人口推移を調べたのが最初です。
高校時代に調べたことなどあまり信ぴょう性がないかもしれませんが、産業革命によって人口爆発が起こった国では、英国が200年ぐらいの期間をかけて総人口が2倍程度まで増えてピークアウトしたほか、他でも似たような傾向があるとの仮説を得たのです。
英国の場合、18世紀に産業革命が始まり、近代化へと突き進み、大植民地時代を経て、20世紀初頭には“大英帝国の没落”を迎える。こうした歴史の流れが、人口推移と見事に重なっていると感じたわけです。
明治維新後に産業革命が始まった日本では、わずか120年程度の間に、4つの大きな戦争を経験したこともあって、人口が4倍近くに増え、一気にピークを迎えることになる。その変化が他の先進国に比べてあまりに急激なので、直感的に「これは大変なことになるぞ!」と思ったことを今でも良く覚えています。

私にとっては、経済記者の原点でもある問題意識でした。しかし、日本の大企業で50歳過ぎてようやく役員になったような人たちを取材していても、「10年後のことなど私には関係ないね」という様子がありあり(実際に、そう言い切ったメガバンクの役員もいました)。
優秀と言われてきた霞ヶ関の官僚にしても、右肩上がりで増え続ける自動車交通予測に基づいて道路をつくり続け、年金問題にしてもこの期に及んでも抜本的な見直しに踏み出せない。そんな時期に政治家は何を意図してか、憲法改正に向けた動きを活発化させている。ビジョンなしに、理念を変えても、良い結果は生まれないように思うのですが…。

当然、日本の住宅メーカーが、100年後の住宅市場がどのようになっているかを考えて“100年住宅”を売り出しているわけではありませんし、不動産会社が100年後の都市のあり方を考えて都心部でマンションを供給し続けているわけでもありません。
日本の住宅政策にしても、これまでは新しい住宅をつくり供給し続ければ良いだけでしたから、100年後のビジョンなど必要なかったかもしれません。これまでの住宅政策と言えば、住宅金融公庫を通じた金利政策、住宅取得促進のための税制、住宅供給公団・公社を通じた住宅の直接供給の3つを、状況に応じて動かしてきただけとも言えるでしょう。
しかし、公団・公社のよる直接供給はすでに役目を終え、公庫の廃止によって金利も政策ツールとして使えなくなる。そんな中で、日本の住宅市場はどう変わっていくか?
少なくとも国民が、今後も適正なリスクの範囲内で住宅投資を続けていける環境だけは整えていく必要があると思うのです。
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