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家づくりの経済学
52
家づくりの経済学(52) 耐用年数の話(3)
「借入者の信用力だけではなく住宅の担保価値に着目して融資を行うノンリコース(非遡及型)ローンについて(中略)住宅ローンの分野においても、担保価値の評価方法の確立等を図りつつ、実現に向けた取り組みを行うべきである」。
何やら堅苦しい文章ですが、自民党の住宅土地調査会が11月19日に取りまとめた住宅金融システムに関する提言から抜粋したものです。
小泉内閣が進めている特殊法人改革の一環として、住宅金融公庫も独立行政法人に移行することが決まっていることはご存知でしょうか? すでに連載コラムでも何度か取り上げていますが、それに合わせて業務の見直しも行われる予定で、これからの住宅金融システムのあり方を自民党としても改めて議論したというわけです。
提言をとりまとめた住宅金融改革小委員会の根本匠委員長(衆議院議員)から話を聞く機会がありました。提言そのものは、来年春にも国会に提出される予定の住宅金融公庫法改正案づくりに向けて自民党の意見を反映させるのが目的ですが、今回の提言でちょっとビックリしたのが、冒頭に示した“ノンリコースローン”のことが盛り込まれていたことです。
連載コラムでは、ノンリコースローンという言葉を使ってきませんでしたが、その必要性については考えてきたつもりでした。コラム(43)では、35年ローンを組んで住宅投資を行うことのリスクを指摘したうえで、最後に「消費者個人のリスクを低減するための施策が求められている」と書いたのは、まさにノンリコースローンを念頭に置いていたのです。
長期の住宅ローンを背負うリスクは、終身雇用・年功序列賃金で失業率が低く、かつ地価も右肩上がりで上昇している時代であれば、あまり表面化しませんでした。給料が順調に上がれば返済負担率は低下していきますし、万一、返済が困難になったとしても地価上昇で売却益が出ることも期待できました。
しかし、バブル崩壊後のデフレ経済の進行で、そうした前提は崩れてしまい、今後は少子高齢化の急速な進展で税金や社会保障費の負担増加が避けられない状況です。個人が長期ローンを背負うリスクは否応無しに高まっていくことになります。
これまでの日本の住宅ローン制度は、土地担保と個人の信用力に依存する仕組みでした。万一、ローン返済が不可能になり、担保物件である住宅を売却してもローンを完済できない場合でも、残った借金(いわゆる無担保債務)を借入者が返済する義務を背負うことになります。
金融機関にとっては、担保を取り上げた上に、足りない分も徹底的に借入者から搾り取れるわけですから、少々、担保の査定を甘くして貸し込んでも、取りっぱぐれるリスクが小さいということになります。
しかし、借入者にとっては、万一、返済が滞ってしまえば、担保である住宅を取り上げられたうえに、担保割れが生じていれば、残りの債務も返済せざるを得なくなり、まさに踏んだり、蹴ったり。これでは、とても怖くて、長期の住宅ローンを組めないということになってしまいます(まだ、多くの方々は、そのことを意識したことはないと思いますが…)。
コラム(43)でも指摘したように、長期ローンを組まずに、十分な住宅購入資金を調達できるでしょうか?
20−30歳代の場合、長期ローンは組みやすくても、信用力が低いために、親の援助でもなければ、十分な資金を調達できません。40−50歳代は、信用力は高いものの、老後の生活資金を心配してローンの返済期間を短くしてしまえば、やはり調達できる資金は限られます。
いくら日本が豊かになり、個人所得も増えたからといって、個人の責任で調達できる資金には限界があるのです。そうした限られた資金で住宅を建ててきたから、わずか平均寿命が30年しか持たないような家しか建たなかったということもできるでしょう。
本来なら、建築の素養も知識も備え、信用力も高い40−50代が、安心して長期ローンを組んで資金を調達し、耐用年数が100年以上もつ立派な住宅を建てることが望ましいはずです。これからの少子高齢化問題や地球環境問題を考えれば、短期間で廃棄されてしまうような安っぽい家を建てている時代ではないでしょう。
しかし、従来のままの仕組みでは、長期ローンのリスクを個人だけに背負わせてしまうことになってしまいます。
ノンリコースローンは、冒頭に示したように、住宅の資産価値に着目して実行されるローンのこと。万一ローン返済が不可能となった場合、担保物件を売却して借金が残ったとしても、それ以上の返済は求められないローンのことなのです。
つまり、担保割れのリスクは、金融機関側が背負うことになります。その分、ノンリコース型は従来のリコース型に比べて、一般的に融資金額が少なくなってしまいますが、住宅の資産価値を50年以上維持することができるのであれば、35年を上回る50年ローンも不可能ではなくなるということになります。
これを実現するためには、提言のなかに出てくる“担保価値の評価方法の確立”が不可欠となります。住宅の品質や性能に関係なく、「築年数」に比例する形で行われてきた従来の評価方法が見直し、この考え方を社会に定着させる必要があるのです。
「まだ抽象論の段階で、ノンリコースローンを実現するための新たな評価方法の見通しが立っているわけでなない」と、根本議員もおっしゃっていましたが、「提言に盛り込むことで、いろいろな場で議論され、実現に向けたアイデアが出てくれば…」ことが期待されているのです。
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