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家づくりの経済学
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家づくりの経済学(49) 土地問題と家づくり(4)
先日、ある50歳代後半の資産家の方と、話をする機会がありました。地方で代々、祖父、父と代議士という家の出で、自分でも会社を作って上場させたのちに売り払い、「あとは人生、遊んで暮らせるだけの金はある」という方です。
「最近、銀行から不良債権処理で持ち込まれる案件の中には、利回り20%で回るものがまだある。2億円で買って年間の収益が4000万円。借金して買っても美味しい商売ができるぞ」。まるでバブル時代を彷彿させるような話をしていました。
確かに、来年4月に迫ったペイオフに向けて、金融機関が最後の不良債権処理に向けて、なりふり構わぬ動きをしているのは、ダイエー問題の処理を見ても明らかです。その一環で収益物件の叩き売りも行われ、そのなかに“美味しい商売”が交ざっているのでしょう。
しかし、こうした美味しい商売ができるのも、豊富な現金・資産を持っているからこそ。多少、資産が目減りしても大丈夫でなければ、とても怖くて億円単位の投資ができるものではありません。
それにしても、こんな話を聞かされると、人気の経済アナリストの森永卓郎氏が指摘するように、一億総中流と言われてきた日本社会でも、バブル崩壊後、資産格差が広がってきていることを改めて実感してしまいます。
今年7月時点での基準地価が、2か月ほど前に国土交通省から公表されました。
新聞によっても書き方に微妙な違いがあり、日本経済新聞などは都心部での地価上昇にスポットを当てて、資産デフレが終えんを迎えたかのような論調。一方で、朝日新聞では全国平均で13年連続下落を見出しに取り、日本全体では地価下落が続いていることを強調していました。
同じデータでも、どこに焦点を当てるのか、どう解釈するか、で見方は違ってくるものです。単純に言えば、需要が高まっている都心部では地価が上昇し始めているが、それ以外の土地は下がり続けている。地価にも、市場原理がキチンと働くようになってきたということなのでしょう。
マンションなどを中心に都心居住が進んでいる背景には、「都心部で買う分には、地価下落リスクが少ない」との思いもあるのかもしれません。収益物件になるような立地なら、売る場合にも有利と考えられるからです。
確かに、資金的に余裕のある人なら、“投資”という考え方で住宅を買っても何ら問題はないかもしれません。しかし、35年ローンを組んで、年間返済負担率もギリギリという人が“投資”で住宅を購入するのは、やはり危険と言わざるを得ないように思います。
今回、土地問題をテーマに取り上げてみて改めて感じたのは、住宅取得のあり方も社会の変化に伴って多様化してきたということです。
これまでは一億総中流、終身雇用・年功序列賃金をベースに、夫婦+子ども2人の標準的な家族の家づくりを考えれば良かったわけですが、最近はそうしたファミリー世帯層がどんどん薄くなっています。その分、高齢者、DINKS、単身者の層が厚くなって、世帯構成もが大きく変わってきました。
所得格差は拡大し、住宅取得の資金計画で「頭金2割+35年ローン」を前提とする人の割合も減ってきているでしょう。住宅投資の促進を大義名分に、住宅取得資金の生前贈与制度が大幅に拡充されたことで、親と一緒にマンションのモデルルームを訪れる若い夫婦も増えたという話もよく聞きます。
さらに、親の土地に家を建てるという方も多いのではないでしょうか?家づくりのために土地をすでに所有している人にとっては土地問題を考える必要はありませんし、土地を持っていない人でも資金に余裕があれば、金利負担を大きく軽減することができます。
つまり、同じ土地を取得するのでも、手持ちの現金・資産に余裕がある人とない人とでは、リスクの大きさが違ってくるということです。当たり前のことのように思われるかもしれませんが、これまでの【定説】は「住宅取得価格は年収の5倍が限度」など“所得”が基準とされてきたわけで、自己資金や保有資産の違いはあまり考慮されてこなかったと言えます。
年収700万円なら、年収と同じ700万円の自己資金を用意して30〜35年ローンで、年収の5倍、3500万円の住宅を購入する—。
従来の【定説】に基づいた住宅取得は、都市への人口流入が活発化だった高度成長期において、住民の多くは都市に土地資産を持っておらず、頭金も貯蓄によって用意するしかなく、しかも地価は右肩上がりで上昇していたので頭金2割が用意できたら、すぐにローンを組んで買うことが正しい選択だった時代の考え方と言えるでしょう。
しかし、バブル崩壊後、地価下落が続くなかで、それが正しい選択であるかどうかは改めて考える必要が出ています。
さらに、すでに土地を所有している人、親からの資金援助などで自己資金に余裕がある人など、それぞれのケースに応じた住宅取得モデルを考える必要もあるでしょう。
従来の発想から抜け出すのは、なかなか容易なことではありません。1年以上、コラムを書き続けてきたわけですが、実は、ここしばらく違和感を覚えて筆が進まない状況が続いていました。その違和感とは、従来のような画一的な住宅取得モデルを描くことが難しくなっている現状を、私自身、まだ十分に認識できていなかったためではないのか?やっと気が付いて、反省しているところです。
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