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家づくりの経済学
48
家づくりの経済学(48) 土地問題と家づくり(3)
地価の違いで家づくりの資金繰りがどれぐらい変わるのか—田舎に家を建てて賃貸で暮らす“二重生活”をシミュレーションしてみることで、実感してみたいと思います。
まず、このコラムでは何度も登場してきた坪単価50万円、敷地面積50坪の土地に、2000万円の家を建てるケース【ケース1】(総額4500万円)を想定してみます。 建築主のAさん(年齢40歳、家族4人)の年収は、【定説1】の「住宅購入額は年収の5倍以内」に当てはめて、今回は4500万円÷5= 900万円に設定することにしましょう。
このAさんが、田舎に土地を購入して家を建てる一方で、都市近郊にも賃貸を借りて“二重生活”を送る【ケース2】を考えてみましょう。田舎の土地も、場所によって価格も千差万別のようですが、ここでは坪単価5万円、敷地面積100坪(総額500万円)として、その上に2000万円の家を建てるということにします。
「自分が賃貸事業者になって、自分に住宅を貸す」—賃貸事業者A氏となったつもりで事業収支を計算してみると、どうなるでしょうか?
【ケース1】では、居住者Aさんは賃貸事業者A氏が提供する都市近郊の家を借りる。
【ケース2】では、居住者Aさんは賃貸事業者A氏が提供する田舎の家と、賃貸事業者A氏が用意した通勤・通学に便利な場所のアパート・マンションを借りる。
もちろん、居住者Aさんが支払う家賃は【ケース1】と【ケース2】ともに同じ額という設定です。
居住者Aさんの賃貸期間は60歳定年退職までの20年間で一区切りとして考えてみました。
4500 万円の住宅を購入する場合の資金計画は、一般的に次のように考えられています。自己資金が2割の900万円用意して、残り3600万円は住宅ローンでまかなう。固定金利3%の35年ローンが借りることができれば、元利均等で月返済額は13.9万円(年166万円)となる。年収900万円のAさんなら「楽に返済できる範囲に収まる」と考えるでしょう。
しかし、20年後の定年退職の時点で考えてみると、この間に金利負担だけで1731万円を支払い、ローンはまだ2006万円も残っているという計算です。
いざとなれば、土地+建物資産2700万円(地価が下がっていなければの話ですが…)を売却することでローンは十分に完済できますが、自宅を手放したうえに、最初に投入した自己資金900万円も全額回収することはできません。
日本の住宅市場の現状では、土地を購入して新築する場合、20年間で“元を取る”のは非常に難しいのです。理由はこれまでも指摘してきたように、減価償却負担が重過ぎる(=中古住宅の価格査定が安すぎる)と、金利負担が重過ぎる(=土地の価格がまだ高すぎる)の大きく2つですが、現状ではこれに基づいてシュミレーションせざるを得ないのが辛いところです。
【ケース1】の場合、賃貸事業者A氏の立場なら、家賃はいくらに設定することになるのでしょうか?
35年ローンで考えた場合、20年間の事業経費=“居住コスト”は、金利負担1731万円+維持費240万円+保険料75万円+固定資産税362万円+減価償却費1800万円=4208万円となります。
20年後の資産売却見込額は2700万円で、住宅ローンの残高を返済して手元の残る資金は2700万円−2006万円=694万円。
初期投資の900万円も含めて回収しようとすれば、事業経費4208万円+自己資金900万円−残金694万円=4414万円を家賃で回収しなければならず、年間221万円、月額18.4万円が家賃ということになります。
居住者Aさんの年収に占める割合は24.5%で、かなり危険水域に迫ってはいますが、辛うじて25%を下回っているギリギリのところと言えるでしょう。
今回のシミュレーションでは、居住者Aさんが支払う家賃を月額17万円に設定しました。この家賃で、【ケース1】では住宅ローン返済を、【ケース2】では住宅ローン返済とアパート家賃をまかない、キャッシュフローがほぼ同じになる形で比較してみようというわけです。
【ケース1】では、家賃17万円を全額ローン返済に回すと、返済期間を25年に短縮でき、金利負担(20年分)は284万円軽減されます。これによって、事業収支も156万円の黒字となり、何と20年間で十分に“元を取った”ことになりました。
20年後に賃貸契約を解消して、不動産資産を売却したとしても、手元に2700万円−950万円=1750万円が残る計算です。
誤解のないように付け加えておくと、「事業収支の黒字」といっても156万円が現金としてプラスになったわけではありません。156万円の黒字分は、土地資産のなかに含まれているもので、資産売却しなければ現金としては出てこないお金です。
【ケース2】では、住宅の総額は2500万円で、自己資金900万円を投入すると、住宅ローンの借入額は1600万円で済みます。これを3%固定金利の20年ローンで組むと、月返済額は8.9万円。居住者Aさんからの家賃は月17万円ですから、家賃月8万円までのアパートなら提供できるという計算です(首都圏近郊では、月8万円のアパートというと、ちょっと厳しい条件かもしれませんが…)。
これで計算した事業収支は、720万円の赤字。20年後に手元に残るのは資産価値700万円の家だけということになり、最初に投入した自己資金も回収できないことになります。
しかし、考えようによっては、住宅ローン残高もゼロとなり、“終の棲家”となる家だけは残ったと言うこともできます。
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