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家づくりの経済学
47
家づくりの経済学(47) 土地問題と家づくり(2)
私の友人に、大学時代に下宿として住み始めたアパートに、結婚して子どもが生まれたあとも、家族4人で住み続けている人がいます。かれこれ20年以上になるのですが、駅からも近くて便利ですし、家賃もそれほど高くなっておらずに、割安なのかもしれません。
ですが、友人がいわゆる賃貸派というわけではないのです。実は、そのアパートから高速道路で1時間ぐらいの田舎に土地を買って自宅をすでに建築済みとのこと。家族全員で平日はアパート、週末は田舎の自宅で過ごすという生活スタイルを続けているのです。
いくら田舎の土地が安いからと言って、家を建てて、アパートも借りてでは、住居費も随分かかるでしょう。ガソリン代や高速道路料金もかかると思うのですが、そんな生活スタイルを実践していると言うのです。
先日、定年退職して田舎暮らしを始めた人を紹介したテレビ番組がありました。定年退職を機に、田舎に土地を購入して家を建てて移り住み、悠悠自適の生活を楽しんでいる様子が映し出されていました。
こうした場合でも、現役時代には通勤・通学に便利な場所に住宅を購入し、定年退職時にそれを売却して新たに田舎に家を購入する、というパターンが大半でしょう。
私の友人のように、若いころから田舎に家を建てて、都会での暮らしは賃貸で済ませようという人は確かに珍しいかもしれません。
住居の理想像は、「職住近接」であると言われてきました。通勤・通学時間で1日2時間、3時間も費やすのはもったいないですから、誰もが生活基盤である職場や学校のできるだけ近い場所に住みたいと思うのも当然の話です。
都市に生活基盤を置く人たちが職住近接を実践しようとすれば、理想は「都心居住」ということになります。不良債権処理が本格化した90年代後半から、都心居住の流れが強まっているのも、最大の障害だった地価が大幅に下落したのが原因。超高層マンションがどんどん建てられて、相変わらず好調な売れ行きを示しており、都心回帰の流れはしばらくは止まりそうにありません。
ある大手不動産会社の社長への取材で、都心居住の話題になったときのこと。社長の奥様が家庭菜園も可能な郊外の自宅を売り払って、リタイア後は都心のマンション暮らしを強く希望しているという話が出てきました。
社長本人は、郊外でのんびり暮らそうと思っていたそうですが、奥様は全くの逆。毎日、展覧会や音楽会などに出かけて帰りはデパートでお惣菜を買って済ませるという都心の生活を満喫したいと思い描いていたわけです。都市での暮らしは確かに刺激があって、誰に会うにも便利。しかも医療サービスも充実していますし、高齢者にとっても快適な環境であるのでしょう。
ただ「都心居住」と「都心に住宅を購入すること」は同じではありません。都心居住は目的であって、それを実現する手段は持ち家でも、賃貸でもどちらでも構わないはず。いくら都市中心部の地価が下落したと言っても、簡単に手が届くという水準ではありませんし、無理に都心居住を持ち家によって実現しなくても良いと考えている人は確実に増えてきているでしょう。
最近では、不動産証券化の考え方も広がってきて、都心部のマンション購入を投資と考える向きもあります。この連載コラムでも家の“資産価値”の重要性には着目してきましたが、家を“投資対象”として扱ってきたわけではありません。「賃貸でも運用できる」と安易に判断するのはやはり危険だと思われます。
「職住近接」も、終身雇用・年功序列が約束されている時代であれば、「職」が固定されているわけですから、「住」を持ち家で固定しても問題はありませんでしたが、これからは「職」を固定するのは難しい時代です。「住」を固定してしまえば、身動きが取れない状況に陥る懸念はますます高まっています。
私の友人のように「職住近接は賃貸で実現して、生活基盤となる持ち家は別に考える」という発想は意外に合理性があるようにも思えるのですが、いかがでしょう。
土地の価格は、これまで「職住近接」という価値観だけで決まってきた印象はあります。前回のコラムで書いたように、首都圏では「西高東低」の傾向があるという定説もありますが、基本的には都市中心部への通勤通学時間に地価は比例してきたと言えるでしょう。これまで政府が進めてきた「持ち家政策」と「職住近接」を同時に実現しようとすれば、そうならざるを得なかったのかもしれません。
しかし、これだけ高速道路網や新幹線網が発達し、超高速のインターネット網を活用してSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)も本格的に広がろうとしているときに、地価だけは相変わらず都市中心部からの距離で決まるというのも少々時代遅れのような感じもします。
それにしても、私の友人のように「職住近接」と「持ち家」とを切り離して両立させることが果たして可能なのでしょうか?そのシミュレーションは次回に試みてみることにします。
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