A-Style 家づくりの経済学  46
家づくりの経済学
家づくりの経済学(46) 土地問題と家づくり(1)
「土地の坪単価と、その土地に建てる家の坪単価はほぼ比例する」—そんな【定説4】(本当に定説になっているかどうかは不明なのですが…)を私の地元、埼玉県の工務店営業担当者から聞いたことがあります。
どういう意味かと言うと、坪単価100万円の土地を買えるほどの経済力のある人なら、その上に坪100万円の家を建てるし、坪単価50万円の土地なら、その上に建つ家は坪単価50万円という意味です。
私が住んでいる埼玉県の場合、川口市は東京駅まで電車で30分、戸田市も新宿駅まで30分という立地ですが、熊谷市だと東京駅まで1時間20分。都心までの距離によって宅地の値段にもかなり大きな開きがあります。
その工務店も、都内から埼玉県北部までの広いエリアで営業展開しており、地価が大きく異なる土地で家づくりを行ってきた経験から、そんな実感を持ったのかもしれません。
この連載コラムで取り扱ってきたモデルケースも、土地が坪50万円で敷地面積50坪の2500万円、家は建築単価坪50万円で延床面積40坪の2000万円に設定したのも、実はこの【定説4】を考慮したからなのです。

もちろん、土地の坪単価と建築単価がほぼ同じになっているかどうかは統計的に調べる必要はあるでしょう。しかし、地価の高い高級住宅街には、やはり高そうな家が並んでいるのは確かです。
東京の最高級住宅街、田園調布には、田園調布らしい家が似合うのであって、ミニ戸建てのような家が建てられてしまうと街並みが壊れると憤慨する方もいるほどです。
逆にハウスメーカーのプレハブ住宅ばかりが立ち並んでいるような地域に、突然、坪100万円以上の邸宅が現れても違和感があるものです。周囲から浮き上がってしまって「ご近所付き合いもギクシャクするのでは?」と、思わず余計な心配をしてしまうのですが、どうなのでしょうか?
分譲マンションのケースを見ても、販売価格帯によって購入する人の所得層はある程度色分けされてしまうのは仕方がないところです。最近では、数百戸以上の大規模マンションの場合、棟内での住み替えも考慮して、広さや間取りを多様化することで購入者の所得層、年齢層が広がるように工夫した物件も登場していますが、それでも限界はあります。

日本でも、江戸時代には、武家屋敷、商家や職人の町など身分や職業によって住む場所が決められていました。銀座や神田鍛冶町といった地名のその当時の名残りだと聞きますが、住む場所を制限することで階級社会を維持し、治安を図ってきたのかもしれません。
しかし、現代社会では日本国憲法第22条によって「居住の自由」が認められており、階級や身分などによって住む場所が制限されることはありません。例外として、暴力団の事務所やオーム真理教の活動拠点が設置されようとすれば、多くの地域で住民が立ち上がって反対運動が展開されてきましたが、そんなケースでもない限り、移り住んでくる人を地域の住民たちが選別することはできないわけです。

自由の国、米国では、住もうとする場所によってコミュニティの審査が必要なケースがあるという話を聞いたことがあります。その場所に住むことが、一種の社会的なステータスとなっているような場合で、住みたい人はお金だけを持っていてもダメで、ボランティア活動など社会貢献を行っているかどうかも重要な要件になるのだとか。
6−7年前に米国の自動車の街、デトロイトを訪問したとき、街の中心部はあまり治安が良くないようでしたが、フォード家の邸宅などがある郊外の高級住宅街は雰囲気が全く違うのに驚きました。所得水準やステータスによって、住む場所や家をステップアップしながら住み替えていくスタイルが米国でははっきりしているようです。

私の勝手な想像ですが、日本の地価が外国に比べて高かった理由は、国土が狭いというだけではないのかもしれません。お金さえあれば、どこにでも住むことが可能だったゆえに、人気の高い場所に需要が集中しやすく、地価を大きく押し上げてきた可能性も考えられるのではないでしょうか? 首都圏の地価に関する【定説5】には「西高東低」というのもあります。皇居を中心にして東側より西側の方が人気が高く、一般的に地価も高い傾向にあるという説です。
その源流は、山の手(武家屋敷などがあった江戸時代の高級住宅街)と下町(江戸城より東側で隅田川沿いまでの庶民の町)にあると考えられます。もちろん下町は下町の良さが評価されていますが、「同じ東京に住むのなら、やはり山の手」は、今も昔も社会的なステータスなのかもしれません。
それが現在では、首都圏全体に拡大して、都心部からの距離が同じなら、東の千葉県より、西の神奈川県の人気が高いという現象につながっているように思われます(かなり、強引が推論かもしれませんが…)。

地価が高い大都市圏で、土地の購入を含めて家づくりをしようとすると、建築費ばかりに資金を投入するわけにもいきませんでした。35年ローンで最大限調達できる資金を、土地代と建築費にどう配分するのか。この問題に対して明確な理由もないままに出てきた答えが【定説4】だったのかもしれません。
利便性が高く住環境も整っている住宅地に住みたければ、地価が高いのは覚悟せざるを得ないでしょう。しかし、東京都心部を除けば、相変わらず地価下落は続いています。家づくりを行う上で、土地問題を改めて考えてみる時期に来ているように思うのです。
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