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家づくりの経済学
42
家づくりの経済学(42) 家計に占める居住コストの割合は?(2)
日本の出生率がついに1.3を割り込んで、1.29になったことが明らかになりました。「早くも年金改正法の前提が崩れた」との論評も出始めていますが、人口減少が社会にさまざまな歪(ひずみ)を生じさせることは避けられないかもしれません。
そうした不安を少しでも解消する視点で住宅問題を考える必要があると思うのですが、日本の住宅政策は産業振興という観点からばかり考えられてきて、生活福祉という観点が欠落していた印象があります。住宅投資のリスクを、家計のなかにキチンと位置付けられるようにすることで、将来の不安を取り除いていく努力が必要になっていると思うのです。
住宅取得に関しては、いくつかの【定説】が唱えられてきました。よく聞かれるものには、次の3つがあります。
【定説1】「住宅の取得価格は、年収の5倍が限度」
【定説2】「住宅ローンの年間返済負担率は、年収の20〜25%以下」
【定説3】「住宅取得時の自己資金は、20%は必要」
この連載コラムでも、【定説3】の「自己資金がなぜ20%は必要なのか」については、担保割れリスクの観点から解説を試みました。金融機関が土地担保融資の「掛け目」を土地評価額の8割程度に設定してきたのも、担保割れリスクを考慮したものであり、地価下落が続いている状況であれば、掛け目を厳しく設定する可能性もあるかもしれません。
3つの定説のうち、住宅ローンを組んで住宅を取得するのに誰もが目安とするのが【定説2】でしょう。日本の住宅ローンは土地・建物を担保に取っていても、基本的には個人所得(年収)に基づいて実行されてきました。住宅ローンに借りる場合には、必ず団体信用生命保険(団信)という死亡保険に加入させられるのも、ローン返済者が万一死亡しても保険金でローン残債をカバーするため。はやり重要なのは返済能力というわけです。
さて、Aさん一家、年収750万円(月収50万円、ボーナス夏冬計3カ月)で夫サラリーマン40歳、妻専業主婦38歳、子ども10歳、6歳の4人家族を想定しながら、話を進めていくことにします。
現在の年収750万円で計算すると、返済負担率20%であれば年150万円(月平均12.5万円)、25%であれば年187万5000円(同15.6万円)となります。ボーナスを併用しようとすれば、20%の場合は月10万円+ボーナス時15万円、25%なら月12.5万円+ボーナス時18.8万円といった配分が妥当なところでしょうか。
返済負担率から逆算でして、住宅ローンの融資限度額を計算するわけですが、変動金利では返済負担率も変動してしまうため、年3.0%の固定金利、元利均等返済方式で考えることにします。
ここで問題となるのが、返済期間をどう設定すれば良いのか?
改めて説明するまでもなく、年間返済額が同じでも、返済期間を長くすれば融資額を多くできますし、短くすれば少なくせざるを得ません。自分の家を作るのであれば、できるだけお金をかけて良い家をつくりたいと思うのが人情でしょうから、多く資金を調達したければ、返済期間を長くすれば良いわけです。
例えば、返済期間を35年に設定すると、返済負担率20%で3250万円まで借りることが可能という計算になります。これに2割相当の自己資金800万円を加えると合計4050万円。【定説2】に当てはめると、年収750万円の人なら、自己資金2割を用意するとして、総額で4050万円の住宅なら無理なく取得できる目安ということになります。
これを【定説1】で考えてみると、年収750万円の人なら、住宅取得の限度額は5倍の3750万円と、300万円少ない計算となります。ただ、現在の金利水準は過去に例がないほど低く、【定説1】が唱えられはじめたころの金利はもっと高かったわけですから、金利4.0%(固定)で考えてみましょう(かつては住宅金融公庫が11年目以降の下限金利としていたのが4.0%ですから、決して高いわけでもありませんが…)。
同様に返済負担率20%で計算すると、融資限度額は2850万円と、金利3.0%に比べて400万円も減少。これに自己資金の800万円(22%相当)を加えると合計3650万円となり、【定説1】に近い数字となります。
どうやら【定説1】は、自己資金を2割用意して、返済負担率20%台前半で、かつ35年ローンを目一杯借りた場合を想定して算出した「限度額」のようです。金利水準がどうなるのか、返済負担率をどのレベルに設定するのか、返済期間をどれくらいに設定するか、で「限度額」が変わってしまうものだと言えるのでしょう。
しかし、Aさんが返済期間35年のローンを組むとなると、返済が完了するのは定年退職を大きく過ぎた75歳。3250万円のローンを借りたあと繰上げ返済を一切行わないとした場合には、60歳定年退職時のローン残高は1811万円と、まだ半分以上残っている計算です。
定年退職後も、毎月12.5万円のローン返済を続けていけるのであれば問題はありませんが、将来的に年金給付額も減らされると聞けば、「定年退職までにできるだけ返済を済ませておきたい」と誰もが思うでしょう。
Aさんも、これから子ども2人の教育費もかかる時期ですが、年収も順調も増え続け、退職金も1000万円以上はもらえるのであれば、定年退職までのローン完済は問題ないと思われます。頑張れば退職金に手を付けずに、繰上げ返済だけで完済できるかもしれません。
しかし、終身雇用・年功序列が崩壊した日本で、これからも年収は間違いなく増え続け、退職金も期待できるのでしょうか?これまでのように35年ローンを前提とした資金計画でも大丈夫なのでしょうか?
結論から言えば、35年ローンを前提に考えて「問題ない」とは思うのですが、そのためには居住者も考え方を変える必要があるでしょうし、政府も住宅政策の重点を移していくことが必要ではないかと思うのです。その話は、次回に。
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