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家づくりの経済学
38
家づくりの経済学(38) エスクロー制度(2)
エスクロー制度とは、買い手Aと売り手Bが商取引を行う場合に「エスクロー」と呼ばれる第三者が間に入ることで、AとBの信用力を補完して取引を成立させるための仕組みと考えることができます。
商取引では、信用力が重要なポイントとなります。買物を行う場合を考えてみても、有名なデパートや大手スーパーなど信用力の高い“売り手”からは安心して商品を購入できますが、聞いたこともない会社の飛び込みセールスにはやはり警戒心が働くでしょう。
一方“買い手”にも信用力があります。通常はその場で代金を支払わなければ、商品を引き渡してくれないわけですが、売り手の判断で信用力がある買い手であれば“ツケ払い”で売ってくれることもありますし、クレジット会社のような第三者が信用を補完した場合もその場で代金を支払わずに買い物ができます。つまり、AとBの信用力によって取引の形態も違ってくるわけです。
家づくりの場合は、どうでしょう?
人生で最も高額と言われる買い物ですから、発注者も家づくりを依頼するのは初めてという人が大半でしょう。経験したことのない取引を行う場合の判断材料は、過去の工事実績や実際に工事を依頼した人たちの評価などにならざるを得ません。
株式を上場している大手ハウスメーカーが安心と判断する人、長年、住んでいる地元で評判の良い工務店が安心という人、信頼できる専門家が紹介した業者が安心と考える人—それぞれ判断するポイントは違うと思いますが、建設会社には、創業400年と言われる竹中工務店をはじめ、100年以上の老舗が多いのも、信用力が重視されてきた商売だからかもしれません。
しかし、大手ハウスメーカーや老舗企業だからといって、100%安心と言うわけでもないのが難しいところです。担当した現場責任者や大工の力量によって施工品質にバラツキが生じるのは避けられないですし、欠陥住宅問題に詳しい弁護士などの話を聞いても大手や老舗だから欠陥が発生しないとも言えないのです。逆に、実績はまだなくても、いまが伸び盛りでレベルの高い仕事をする業者だっているはずです。
「確かに“腕”は良さそうだが、まだ実績が乏しくて会社規模も小さいので信用力にちょっと不安が…」—そんな時に“腕”や“設計力”を取るのか、“実績”や “経営基盤”を取るのか。やはり“腕”や“設計力”を優先したいという発注者にとって、エスクローの仕組みを使って信用力を補完することで、そうした不安もある程度解消できると思うのです。
もちろん、エスクローは受注者にとってメリットが大きな仕組みです。連載コラムで以前に、私の実家の工務店では飛び込み客の仕事をほとんど引き受けたことがなかったという話を書きました。それだけ慎重に対応していても、工事代金の一部を踏み倒された経験があるという話も書きました。 「飛び込み客を受けない」というと、消費者を選別しているようで不快に感じるかもしれませんが、従来の家づくりにおける代金決済のやり方は“ツケ払い”に近いものです。どんな商売でも、相手の信用力が判らないのに“ツケ払い”に応じることはないわけですから、私の実家のような零細工務店にとって発注者の信用力を判断するのが難しい飛び込み客はリスクが大きいと考えざるを得なかったのです。
受注者にとって安心できるのは、契約時点で工事代金を全額用意されているか、金融機関など信用できる第三者に証明してもらえることです。金融機関が審査して住宅ローンの融資が決定している発注者であれば、信用力が証明されたと言えるのですが、以前紹介にした住宅ローンの代理受領(金融機関から直接、施工業者に支払われる)を適用するのでなければ、必ず工事代金が支払われる保証はありません。やはり、契約時点で工事代金が全額用意されていて、エスクローに支払われることが望ましいと考えられます。
しかし、ここで問題となるのが、工事契約時点で発注者が工事代金を全額用意するということ。大半の方は住宅資金にローンを利用するわけですが、工事が完成して担保設定を行ってからでないと融資は実行されません。エスクローを利用できるようにするには、住宅ローンが工事契約時点で実行されるようにする必要があるのです。
この問題を解決するために、いろいろな仕組みが検討されてきました。金融機関にとってみれば、計画された住宅が間違いなく完成して担保設定できることが保証されれば、建築確認申請が下りて工事契約が結ばれた時点で住宅ローンを実行できるという理屈も成り立ちます。家づくりに関するリスクを担保して、良い家づくりを実現できる環境を整えることがエスクロー制度の第1歩なのです。 良い家づくりのためポイントは、設計と施工にあります。最初に家の品質・性能をキチンと評価できる設計図面がなければ、着工前に金融機関が融資に応じることもできないのです。
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