HOME
|
会社概要
|
サイトマップ
|
お問合せ
A-Style
家づくりの経済学
34
家づくりの経済学(34)出来高払いの必要性(1)
この連載コラムも「つくる」ことにこだわって、ますますマニアックな方向に進んでいるような感じもしますが、家づくりの資金繰りに関する話題の続きで「出来高払い」を取り上げることにします。
最初に「出来高(できだか)」という言葉をご存知でしょうか?これは建設業界では良く使われている言葉なのですが、「工事の進ちょく状況」と解釈していただいて結構だと思います。
例えば、高速道路の工事などで道路用地を高くするために土を盛る「盛土工事」で、最終的に10万立方メートルの土を盛る計画のうち、5万立方メートルまで工事が進んでいる状況だと「出来高5割」ということになります。
建設工事で重要な要素として「工期を守る」ことがありますが、天候不順や資材の搬入遅れなどで工事が遅れていると「出来高が上がっていない」。逆に順調に進んでいると「出来高が順調に上がっている」といった表現が使われます。
住宅建築の場合、ダムやトンネルなどの土木工事に比べて工期が非常に短いですし、基礎工事や内装工事、電気工事などそれぞれの工種(工事種類の意味)の工期も短いので「出来高5割」といった表現はあまり聞きませんが、ひとつひとつの工種を着実に完了させながら「出来高が上がっていく」ことになって、最後は無事に工期どおりに「竣工」ということになるわけです。
「出来高払い」とは、この出来高に応じて工事代金の支払いを行う方式のこと。欧米では「出来高払い」が一般的だと聞きますが、これは工事の発注方式の違いに起因していると考えてよいでしょう。
ASJのサイトにアクセスした方は、ハウスメーカーに家づくりをまるまる依頼するのではなく、まずは建築家に設計を依頼したいと考えている方でしょう。
ただ、設計図面が完成したあとは、実際の建築工事は工務店などの施工業者に一括で任せようと考えているのではないでしょうか?
日本では、建設工事の施工をゼネコン(総合建設会社)や工務店に依頼するのが当たり前だと考えられてきました。これは「一括請負方式」と呼ばれる発注方式です。
これに対して欧米では、工事の内容によっていくつかの発注方式が使い分けられているのです。もちろん一括請負方式で発注される工事も多いようですが、「分離発注方式」と呼ばれる発注方式も幅広く利用されています。
一括請負方式は、工種ごとの施工業者の選定や資材調達を含めて元請け業者である工務店に全てお任せする方式です。これに対して分離発注方式は、工種ごとの施工業者や資材の調達先の選定を工務店に任せ切りにせずに、必要に応じて工種や資材調達を分離して発注する方式を言います。
「良い工務店を選定するのも難しいのに、専門工事業者や資材調達先まで選定するなんて、とてもできない」と考えられるかもしれません。 確かに発注者が専門工事業者の選定まで全部行うのは難しいでしょうが、工事は全て「工務店にお任せ」でなくても良いことを知っているだけでも「家づくり」に対する取り組み姿勢が違ってくると思うのです。
最近では、家づくりを題材としたテレビ番組も数多く放送されています。もちろん演出上で行っていると思われるものもありますが、「工事費を安くするためにペンキ塗りは家族総出で行いました」なんていうのも、一種の分離発注だと言えます。
「ヨーロッパで見つけてきたこだわりのタイルを、キッチンの壁に使ってもらう」といった発注者による材料支給も、分離発注的なやり方でしょう。
以前、NHKの情報番組で東大教授である建築家の自邸が紹介されていたものがあったのですが、「設備工事の見積もりのなかで高額だった工種があったので、それだけ分離発注しました」と、さらりと言っていました。もちろん各工種の見積もりが高いかどうかを判断するのは素人には難しいわけですが、そのために建築家がパートナーでいるわけです。
さて、分離発注方式を行う場合、分離発注した業者への支払いをどうなるでしょうか?工務店経由で発注した工種であれば、工務店に任せておけば良いのですが、発注者が分離発注したとなると話は違ってきます。
「家が完成して住宅ローンが下りるまで、代金の支払いを待ってくれ!」と言って専門工事業者が了承すれば良いですが、一般的には工種が完了したらできるだけ早く代金を支払う必要が生じます。専門工事業者も、工務店経由より直接発注の方が支払い条件が良いと思うからこそ、安い値段を提示する面もあるわけですから。
毎度のことで、説明が回りくどくなってしまいましたが、分離発注方式で工事を行う場合には、工事の進ちょく状況にあわせて「出来高払い」する必要性が出てくるのです。
材料を選び、工事業者を選び、家づくりを楽しもう—と思えば思うほど、発注者は工事資金をコントロールする必要に迫られるというわけなのです。
筆者にメールを送信する