A-Style 家づくりの経済学  32
家づくりの経済学
家づくりの経済学(32)住宅事情—2004年春
桜の季節となりました。約2か月間もコラムを休載しましたが、新年度のスタートに合わせて再開です。引き続き、よろしくお願いします。

国内景気にもようやく明るさが見えてきたようです。企業の設備投資も活発化してきており、デジタル3種の神器(薄型テレビ、DVDレコーダー、デジタルカメラ)や第三世代携帯電話などの売れ行きも好調と聞きます。以前に比べて経済分野で明るいニュースが目立つようになってきました。
株価も上昇局面が続いていますし、先に発表された今年1月の公示地価も大都市圏では下落幅がかなり縮小してきました。鉄鋼製品など一部に値上がりする素材も出ています。90年のバブル崩壊後、出口が見えない状態が続いていたデフレ経済にも転換点が近づいているのでしょうか?

「家づくり」の観点で見れば、デフレ経済は必ずしもマイナスだったわけではありません。デフレによって資材を中心に家づくりのコストも下がりましたし、新規に土地を買って家を建てる人にとって地価下落によって土地が入手しやすくなったのは確かです。
最も影響が大きかったのは、住宅ローンの金利低下でしょう。かつてこれほどの低金利となったことはなかったわけですし、安定的に資金提供されたこともなかったかもしれません。2001年から導入された住宅取得控除の大幅拡充も追い風でした。
コラム(11)で、土地2500万円、建物2000万円の住宅を建てて40年間住み続ける場合の「居住コスト」を計算したのを覚えているでしょうか。これに当てはめて3600万円の住宅ローンを35年固定金利元利均等返済で年利3%で組めた場合には、金利負担(2219万円)+減価償却費(1800万円)+固定資産税等(539万円)+火災保険料など(110万円)+維持修繕費(480万円)=5148万円となります。
もし、住宅ローン金利が年利4%と1%高くなれば、金利負担は3095万円と875万円も増えてしまいますから、40年間の居住コストも6024万円と17%も高くなるわけです。金利が1%変動しただけで居住コストはこれだけ大きく変動するのですから、消費者が住宅ローン金利に敏感になるのも当然のことでしょう。
それだけに景気回復は明るいニュースですが、金利の動向も気になります。こと住宅ローンの金利に関しては、06年度末の住宅金融公庫の廃止に向けて民間金融機関が貸出競争を展開している真っ最中であり、現時点では急に上昇するとは考えにくいように思えます。一方で、住宅金融公庫でも証券化ローンへの切り替えを積極的に推進し始めたところですが、07年度から直接融資が廃止された場合に、その後の金利動向がどうなるかはなかなか読みにくいところです。

「住宅の建て時とはいつでしょう?」
「金利が上昇局面に入る」とか「金融公庫が直接融資の金利を引き上げる」といった新聞記事などを見ると、そんなことが気になってきます。昨年も住宅取得控除の延長問題が議論される過程で、多少、駆け込み需要が発生したようですが、住宅取得控除で受ける恩恵は100万円単位で効いてきますから、何とかそれに与ろうと考えるのも無理からぬところでしょう。
同様に、住宅ローン金利も1%違えば金利負担は大幅に増減するわけですから、住宅取得控除の恩恵も厚く、住宅ローン金利も低い今は、住宅の建て時、買い時のようにも思えます。景気回復が本格化すれば最大の不安要素だった雇用や所得の安定も期待できそうです。

「建てたいと思った時が、建て時」—誰が言ったのかは忘れてしまいましたが、この話を聞いたときに共感したのを覚えています。金利や住宅取得控除など住宅政策の動向にあまり神経質にならずに、じっくり「家づくり」に取り組むことが大切だという意味に解釈しました。
住宅ローンの金利も、上がったら上がりっぱなしというわけではありません。20年、30年という返済期間には、また金利が下がってローンを借り替えたり、繰上げ返済をしたりすることで金利負担を軽減できる可能性もあります。住宅取得控除にしても住宅投資が低迷する状態が続けば、政府が米国のような住宅ローン利子控除制度を導入することも考えられます。
固定資産税も3年ごとの評価換えで地価が変動すれば変わります。地震保険に加入していない方も多いですが、その場合は保険料が安くなりますし、維持補修費も住む方の考え方によって千差万別になるでしょう。減価償却費も、中古住宅市場に証券化の考え方が浸透することで計上方法も変わっていくかもしれません。
居住コストは、住み始めたあとの住み方や社会情勢によっても大きく変化するのです。民間金融機関の取り組みや金融公庫の廃止問題など「家づくり」を取り巻く環境の変化について今後も情報提供していきたいと考えていますが、やはり最も重要なのは建築主がどのような「家づくり」をめざすのかということだと思うのです。
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