A-Style 家づくりの経済学  24
家づくりの経済学
家づくりの経済学(24)住宅ローンの証券化(4)
住宅ローンの証券化をテーマに話を進めてきましたが、ここでポイントを整理しておくことにしましょう。
住宅ローンの証券化とは、住宅市場を再構築するための新しい仕組みなのです
。 戦後、極端な住宅不足を解消するために、右肩上がりで地価上昇が続くなかで、国は長期固定の住宅ローンを提供し、住宅の工業化を推進しながらハウスメーカーを育成し、大量の住宅供給を促進してきました。
しかし、いまや少子高齢化社会を迎えて、住宅市場を取り巻く環境も大きく変化してきました。個人所得も右肩上がりで増える時代ではなくなり、格差も拡大、終身雇用制度も徐々に崩壊し、労働市場の流動性も高まっています。高齢化の進展で年金問題もクローズアップされ、老後の安定した生活資金の確保も関心を集めています。
土地も、バブル崩壊後に地価下落が進み、郊外宅地ではいまだに下げ止まる気配はありません。大都市圏に比べて地価が低い地方圏では、担保不足で十分な住宅建設資金を調達できないという話も聞きます。
住宅市場そのものは、すでにストック数が住宅世帯を上回っているものの、耐震性など住宅性能に問題のある既存住宅も数多く残されています。一方で、欠陥住宅の問題は相変わらず改善されておらず、むしろ大工など職人の高齢化が進み、技術力の低下が心配されている状況です。

こうした様々な問題に解決するには、「いったい、どうしたら良いのでしょうか?」
「よっ!待ってました、さんよう!」(NHK教育テレビの「にほんごであそぼ」痛快!日本語劇場から)
「住宅が“資産”として正しく評価される」市場を構築する—。このことが必要不可欠だと考えられているのです。
消費者にとって家づくりを進めるうえで、住宅ローンの“金利変動リスク”と“信用リスク”、欠陥住宅問題に代表される“品質性能リスク”の3つのリスクにどう対応するかが、大きな課題となります。これまで金利変動リスクは、国(住宅金融公庫)が長期固定の住宅ローンを提供することでカバーされてきましたし、信用リスクは担保となる土地が右肩上がりで上昇してきたことや個人所得も増え続けてきたことであまり表面化してきませんでした。
かつては“ムラ社会”という信用維持装置によって確保されてきた品質性能リスクは、都市型社会の進展によって増大。住宅金融公庫が「公庫仕様」という形で一定の水準の住宅仕様を示すことで質向上を図ってきましたが、十分にカバーできていないのが実情ですし、居住者による品質性能の維持管理も十分に機能しているとは言えないでしょう。
こうした中で、住宅金融公庫の廃止が決まったわけです。民間金融機関も、長期固定の住宅ローンを商品開発し、積極的に提供し始めてはいますが、主力商品は変動金利商品(短期固定型を含めて)であり、金利変動リスクは増大するのは間違いありません。信用リスクは、個人所得も伸び悩み、雇用環境は厳しく、しかも地価下落は続いているなかで大きく増大してきました。
さらに、品質性能リスクにとっても、融資条件に公庫仕様の実施を工務店などに求めてきた住宅金融公庫の廃止がマイナスに働くことが懸念されています。もちろん、住宅品質性能表示制度といった制度も徐々に浸透してきていますが、品質性能が資産価格にほとんど反映されていないために、維持管理のインセンティブが働かかず、中古住宅を含めた品質性能の向上につながっていないのが実情です。
こうした状況で、何の対策も講じないまま、住宅金融公庫を廃止すれば、金利変動リスクも、信用リスクも、品質性能リスクも、消費者の負担だけが増大することになりかねないのです。消費者のリスクが増えれば、住宅投資は冷え込むだけ。消費者にとってだけでなく、住宅産業にとっても、金融機関にとっても、そして国にとっても良い話ではないでしょう。

家づくりのリスク分担は、どのように再構築されていくことが望まれているのでしょうか?
住宅ローンの金利変動リスクや信用リスクは、証券化を通じて基本的に投資家が担保。建築家や施工業者は品質性能の高い住宅を供給と維持管理に責任を負い、住宅性能評価機関が品質性能リスクを担保。消費者も住宅の品質性能をきめ細かな保守管理によって維持していく責務を担う。不動産業界は、透明でオープンな中古流通市場を育成して、適正な住宅価格の形成を促進。高齢者が住宅資産を生活資金として現金化するリバースモーゲージ制度を利用しやすい環境も実現する。
こうした住宅市場が、果たして実現するのでしょうか?その鍵を握っているのは、消費者自身であると思うのです。
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