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家づくりの経済学
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家づくりの経済学(23)住宅ローンの証券化(3)
「住宅ローンが証券化されれば、欠陥住宅問題が解決する」—住宅ローン証券化の意義は、実はここにあるのです。
「おい、おい、落語に出てくる『風が吹けば、桶屋が儲かる』じゃないんだから、適当なことを言うもんじゃない」と叱られてしまいそうですが、これで欠陥住宅問題が解決するのなら、消費者にとっても悪い話ではありません。
『風が吹けば桶屋が儲かる』とは、ご存知のように「風が吹くと砂ぼこりが出て盲人がふえ、盲人は三味線をひくのでそれに張る猫の皮が必要で猫が減り、そのため鼠がふえて桶をかじるので桶屋が繁盛する」という例え話。広辞苑によると、「思わぬ結果が生じる、あるいは、あてにならぬ期待をすることのたとえ」と解説されています。
「住宅ローンが証券化されれば、欠陥住宅問題が解決する」も、確かに似たようなところはあるのですが、「風→桶」のような“あてにならぬ”話ではありません。住宅ローンの証券化によって「住宅の品質性能の維持・確保に、市場原理を導入する」という狙いがあるのです。
証券化とは「収益の分配を約束することで投資を募る手法のこと」であるわけですが、投資家は証券化の対象となったモノの収益性をどのように評価するのでしょうか?
企業の場合なら、直近の業績、配当状況や、今後の収益見通しや成長性などで判断され、それが株価にも反映さることになります。これがオフィスビルや賃貸マンションなど不動産の場合なら、賃料収入、維持管理コスト、空室率などが判断材料となるわけですが、収益を生み出す源泉となる“建物”の評価も大きく影響することになります。
年間の賃料収入が同じ建物でも、耐用年数が15年しか残っていない物件と、まだ50年は稼いでくれる物件とでは、投資家は収益性をどのように判断するでしょうか?当然、耐用年数が多く残っている方の価値が高いと考えるでしょう。
建物の耐震性能も収益性に大きく関わってきます。もし地震で建物が倒壊してしまえば一瞬にして収益を生まなくなってしまうわけで、耐震性能が低ければそのリスクを地震保険でカバーしなければならず、収益に対してマイナスに働くというわけです。
当然、欠陥住宅などは問題外。投資家にとっては全く投資に価しない物件ですから、こうした投資不適格物件をどのように排除するかが重要になってくるわけです。
97年に山一証券の自主廃業と北海道拓殖銀行の経営破たんが引き金となって金融危機が表面化、企業の不良債権処理が本格化しました。このときに証券化手法を上手く利用して不良債権の担保不動産を流動化するビジネスモデルを、本格的に日本に持ち込んできたのが外資系金融機関でした。
その当時取材していて驚いたのは、投資対象の物件をキチンと費用をかけてリスクを徹底的に調べ上げることでした。考えてみれば当然のことなのですが、日本はバブル時代までは土地本位主義でしたから、費用をかけて建物を調べ上げるなんてことはほとんどしていかったのです。
さらに95年の阪神大震災を教訓に、投資対象とする建物は1981年に策定された新耐震基準に適合していることを基本的な条件としていました。その上で第三者の建築専門家によるエンジニアリングレポートを作成して、格付け機関による評価を受けるわけです。
これが新築物件の場合は、施工段階で徹底した調査を行うことになります。日本でも、建築基準法で中間検査と完成工事検査を受けることが定められているのですが、住宅における完成工事検査の実施率は半分以下、中間検査はほとんど行われていないという状況が続いてきました。
投資家の立場になってみれば、性能品質もキチンとチェックされていない住宅に投資するなどあり得ない話です。性能品質が評価されていない住宅は、本来なら住宅ローンの証券化の対象にはなりえないのです。
米国にはインスペクション制度という公的機関による住宅検査制度があります。米国のある州のインスペクター(検査官)を取材したことがありますが、住宅が完成するまでに6〜7回の検査が実施されると言います。検査に入るタイミングも、基礎工事の鉄筋と型枠が組まれてコンクリートを打つ前の段階や、設備関係の配管工事が終わった段階など、内部の状況をチェックできる段階に定められています。 日本の中間検査の場合、基礎工事が終わり、軸組みが組み上がった段階で行うのが一般的ですから、最も欠陥が発生しやすいと言われる地盤や基礎を検査することなどほぼ不可能です。工事完成検査も、壁を剥がして配管や断熱材の状況をチェックすることはできないわけですから、内装の仕上げや建具の状態をチェックするぐらいのものです。
こんな検査でも、日本では金融機関が住宅ローンを貸し出してきました。担保は基本的に土地であり、しかも高額な保証料と生命保険料を強制的に支払わせて信用リスクをカバーしているので、住宅に欠陥があろうがなかろうが金融機関にとっては痛くも痒くもないからなのでしょう。
そもそも建築の素養も知識も乏しい個人消費者が、住宅の品質性能リスクも全て背負わなければならなかったこと自体が問題だったのです。自動車や家電製品にしても欠陥商品を買った消費者が全ての責任を問われることなど基本的にはありえないわけですから…。
住宅ローンの証券化が導入されたのを機に、住宅の性能品質におけるリスク分担のあり方を改めて考える必要があると思うのです。
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