A-Style 家づくりの経済学  21
家づくりの経済学
家づくりの経済学(21)住宅ローンの証券化(1)
今月(10月)から住宅金融公庫の証券化手法を利用した住宅ローンの販売がいよいよスタートしました。すでにソフトバンクファイナンス系列のグッドローンが、新生銀行(旧・日本長期信用銀行)と組んで証券化手法を使った住宅ローンを販売していますが、日本でもいよいよ証券化手法を使った住宅ローン商品の販売が本格化することになります。
借りる側にしてみれば、利率や手数料、保証料などの融資条件がどうなるかが問題であって「ローンの難しい仕組みなどはどうでも良い」と思われるかもしれません。
しかし、証券化を前提にした住宅ローンは、“家づくり”にも大きな影響を及ぼすと考えられるのです。なぜ、住宅ローンに証券化手法を使うのか?消費者としても、その背景を理解しておく必要があると思うのです。

「証券化」とは、収益の分配を約束することで、投資を募る手法のことを言います。証券と言えば“株式”が思い浮かぶと思いますが、株式会社の場合も収益の中から配当を支払うことを約束して投資を募るという基本的な仕組みは同じと言えます。
この証券化の手法を“土地”に適用する動きが、バブル崩壊後、日本にも広がってきました。土地の運用で得られる収益を分配することを約束することで、すっかり冷え込んでしまった土地への投資を募ろうというわけです。
土地も、ただ所有しているだけでは収益を生みません。土地のままなら、耕して農作物を作って売るか、駐車場として貸すかでしょうが、一般的にはオフィスビルや商業施設、賃貸マンションなどの収益性のある建物を建て貸すことで収益を上げることになります。
例えば、土地を取得して賃貸マンションを建設して運用するケースを考えてみましょう。
付近の賃貸マンションの家賃相場が、月額坪単価1万円(ちょっと高いかもしれませんが…)の場所に賃貸マンションを建設することにします。約66平方メートルの部屋で家賃20万円の物件です。
マンション全体の規模は賃貸床面積で320坪、共有部分を含めて400坪、敷地は100坪で、建築費は坪50万円ということにしてみましょう。
年間の賃料収入は空室発生が20坪分発生すると見込んで1万円×300坪×12カ月=3000万円。固定資産税などの経費は1000万円と仮定すると、差し引き年間収益2000万円を稼ぐ土地+建物というわけです。
この物件を証券化して収益2000万円を利回り年5%で配当すると約束した場合、投資家からは2000万円÷5%=4億円の投資を引き出せることになります。マンションの建設費は50万円×400坪=2億円ですから、土地の取得費用は4億円−2億円=2億円(坪単価200万円)以内であれば、投資家から調達した資金で初期投資を全てカバーできる計算となります。つまり、分譲マンションの開発事業者にとって事業リスクを全て投資家に転嫁することが可能になるわけです。
土地の収益性から逆算して、土地の価格を決める方法を「収益還元方式」と言い、米国などでは一般的に用いられていました。日本にも97年ごろから不良債権処理が本格化するなかで、外資系投資銀行によって欧米型の収益還元方式が持ち込まれ、商業地を中心に適用されるケースが増えているのです。

住宅ローンに証券化手法を利用するのも、考え方は同じです。住宅ローン債権を証券化することで、住宅ローンのリスクを投資家に持ってもらおうというわけなのです。
従来の住宅ローンの仕組みを考えてみると、金融機関が預金など短期で調達した資金を長期の住宅ローンとして貸し出す場合、金融機関は「金利変動リスク」と、借りる側が延滞なしに最後まで返済してくれるかどうかの「信用リスク」を抱えることになります。
金利変動リスクを低くするには、変動金利で貸し出して“借りる側”に負担してもらうか、固定なら金利を高く設定するかのどちらかとなります。信用リスクは保証人または保証料(3000万円を30年借りる場合で約60万円=大手A銀行のケース)でカバーしてきました。
前回のコラムでも指摘したように、金利変動リスクは個人が背負うには非常に高いリスクです。それは金融機関にとっても同様で、これまで住宅金融公庫が固定金利ながら民間に比べて低い金利で貸し出すことができたのも、金利変動リスクを国からの補給金(税金)でカバーできたからと言えるかもしれません。

もし、住宅ローン債権を証券化して投資家が買ってくれれば、金利変動リスクは投資家が負担してくれることになります。元金3600万円、固定金利3%、返済期間35年の住宅ローン債権であれば、毎年約173万円の返済金額がコンスタントに入ってくるわけで、投資家にとっても悪くない商品と言えます。
しかし、ローン破たんが発生すると、年間173万円の返済金が一気に0円になってしまうわけで、この信用リスクをどのようにカバーするのかが問題となります。その時には、担保として差し入れられている住宅を賃貸に回して得られる収益でカバーするのが、証券化の基本的な考え方となります。
最近、雑誌などで「賃貸住宅として貸せるような住宅を買うべし!」といった記事を見かけるようになりましたが、考え方は同じ。賃貸住宅として貸せるような物件なら収益に見合った価格で投資家などが買ってくれるわけで、そこで信用リスクを吸収するわけです。
ここで、担保となっている住宅が賃貸に回して収益を得られるような良質な住宅であるかどうかがポイントとなってきます。20年ぐらいでボロボロになって、誰も借りてくれないような住宅は、収益を生まない住宅であり、本来は証券化に対応できていないということになるわけです。
話が、随分回りくどくなってしまいましたが、住宅ローンの証券化が“家づくり”にも大きな影響を及ぼすというのはこの部分なのです。
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