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家づくりの経済学
19
家づくりの経済学(19)変革期を迎えた住宅ローン(2)
消費者にとって利用しやすい住宅ローンとはどのようなものなのでしょうか?前回に引き続き、「与信」という観点から、考えてみることにします。
住宅ローンを、何も特別な商品と考える必要もないのかもしれません。極論すれば、スーパーマーケットで売られているキャベツやバナナと「同じ商品には代わりはない」と言うことも可能です。
ただ違うのは、キャベツやバナナは自分の財布から“お金”を払って買うわけですが、住宅ローンは“信用力”で買うという点。ここが決定的な違いでもあるわけです。
通常の買い物では、自分の財布の中身とよく相談しながら欲しい商品を買いますが、住宅ローンの場合はそういうわけにはいきません。自分の財布の中にいくらお金=信用力が入っているかは、当人には正確に判らないからです。
金融機関に住宅ローン商品を買いに行く(=借りにいく)と、いきなり自分の財布の中身を調べられて、商品を売る、売らない(=貸す、貸さない)は基本的に金融機関が決めることになります。
もちろん、自分の財布の中身がどれぐらい入っているのか、おおよその見当をつけることは可能です。住宅金融公庫や銀行などの住宅ローンサイトには、年収に占める住宅ローンの返済額の割合(返済負担率)は一般的には「20%以下が理想的」(25%の場合もあり)などと書かれており、この条件に当てはまる人には基本的には「商品を売ります」との意思表示と考えてよいでのでしょう。
例えば年収600万円の人であれば、返済負担率20%で年返済額は120万円以下(月額10万円以下)ということになり、元利均等方式で固定金利年3.0%の住宅ローンを考えた場合、逆算すると融資額2600万円までならOKというわけです。返済負担率25%まで大丈夫なら、融資額3250万円の商品を買うことができるというわけです。
消費者の財布に欲しい商品を買えるだけのお金=信用力が入っていないのであれば、相手が売ってくれないのも当然です。「貸さぬも親切」と言われるように、ローン破たんを未然に防ぐのも金融機関の役割であるはずですから、信用力の審査が厳しいことは決して消費者に悪いことではありません。
そうは言っても、先ほどの事例のように融資額2600万円と3250万円とで650万円もの開きがあると、家づくりの計画にも大きな狂いが生じます。計画当初に住宅ローンの借り入れ可能額を調べることはできますが、実際に融資を実行する段階で、どの金融機関でも融資の必須条件としている「(系列)保証会社の保証が受けられる人」に該当するかどうかが確約されているわけではありません。
この「保証会社の保証が受けられる人」との条件はなかなかの曲者。金融機関が融資を断るのに「保証会社の保証が付きませんでした」という理由ほど都合の良い理由はないわけです。「なぜ保証が付かなかったのか」と尋ねたとしても「保証会社の決定ですから、こちらでは判りません」(自社系列の保証会社であるケースがほとんどにも関わらず…)との答えが返ってくるのが関の山でしょう。
最近では、住宅ローン商品にも、スーパーやデパートのバーゲンセールと同じようなキャンペーン金利商品が発売されるようになりました。
デパートのバーゲンセールの場合、最大の狙いは集客です。バーゲン品はもちろん、バーゲン品以外の商品を買ってくれる可能性が高まるわけで、デパート側にしても安売りする十分なメリットがあるわけです。
住宅ローン商品でも、キャンペーンの狙いは集客でしょうが、キャンペーン商品ばかりが売れて、果たして金融機関にメリットがあるのでしょうか?
キャンペーン商品を買いに来た消費者にしてみれば、自分の財布にいくら入っているかは判らないわけですから、金融機関に「保証が付きませんでした」と断られたり、別の商品を売りつけられたりしたとしても納得せざるを得ないことになります(理屈では…)。金融機関にしてみれば、優良顧客を囲い込むのが大きな狙いでしょうから、信用リスクが低い顧客に無理にキャンペーン商品を売る必要もないわけです。
3年固定特約ローンなどのキャンペーン金利の場合、通常金利が年3%ぐらいのところ、初回だけキャンペーン金利1%を適用、3年後に特約が切れたときにはほぼ自動的に金利が上がることになるわけですから、そこで儲けようということなのかもしれません。
先日、ある大手銀行が、住宅金融公庫を上回る長期固定金利ローンをキャンペーン商品として発売しました。キャンペーン期間内でも予定数量に達したら販売を打ち切るという数量限定商品で、事前に予定数量は公表されませんでした。
バーゲン品に予定数量があるのは仕方ないことですが、かつて住宅金融公庫に対して事前公表した予定融資枠を上回る申し込みがあった時代には、融資基準をクリアした応募者の中から融資先を抽選で決めていたと聞きます。人気のマンションや建売住宅の募集でも、応募者が多いことが予想される場合には抽選を行うのが一般的ですが、このキャンペーン商品の場合は、早い者勝ちで叩き売られるバナナと似たような売り方です。
インターネットを通じて住宅ローン商品の情報収集もしやすくなってきました。金利の比較だけでなく、手数料、保証料、団信料などの諸経費、さらに繰り上げ返済時の手数料などの商品比較は今後ますます充実していくと思われます。
加えて金融機関や保証会社が、消費者の信用力と明確な融資基準を事前に公表してくれるなら、消費者にとっては利用しやすいのですが、彼らにとって与信審査はまさに“飯のタネ”。手の内を明かすわけにもいかないでしょう。
今後の住宅ローン市場は、商品の種類もバラエティに富んで選択肢の幅も広がっていくことになります。そうした観点でみれば消費者にもメリットはあるわけですが、一方で商品選びは確実に複雑で難しくなります。
信用力がそれぞれに異なる消費者が、自分に合った最適な住宅ローン商品を選ぶにはどうすれば良いのでしょうか?
いくら消費者が頑張って情報を集めたり、勉強したりしても限界はありますし、直接、いくつもの金融機関に相談するのも大変です。消費者側の立場から賢い住宅ローンの商品選びをサポートしてくれるファイナンシャル・プランナーのような専門家を育てて積極的に活用することが必要になるだろうと思うのです。
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