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家づくりの経済学
18
家づくりの経済学(18)変革期を迎えた住宅ローン
ここ1−2年、いろいろな住宅ローン商品が登場してきました。その多くは民間の金融機関が新たに商品化したものです。それぞれに商品の特徴も異なっており、新聞や雑誌などでも住宅ローンの商品比較記事を良く見かけるようになりました。
かつて住宅ローンといえば、住宅金融公庫や厚生年金融資など公的ローンが中心でした。しかし、最近では民間ローンがシェアを急速に拡大しており、消費者にも民間ローンを積極的に利用しようという意識が高まってきているようです。
住宅ローン市場は、いま大きな変革期を迎えています。
1950年に設立され、半世紀もの間、国民の住宅ローン需要を支えてきた住宅金融公庫の廃止が、2001年12月の特殊法人等整理合理化計画で決まり、巨大な住宅ローン市場を民間金融機関が中心となって担っていくことになったからです。
ただ、今回の住宅金融公庫の廃止が、消費者にとってメリットがあるかどうかは判断が難しいところでしょう。公庫廃止の理由は、あくまでも公庫への多額の税金投入など財政問題が主で、必ずしも消費者側のメリットを優先して決まったことではないからです。
もちろん「民業圧迫」との批判を展開してきた民間金融機関は、ビジネスチャンスとばかりに公庫に負けない商品を提供し始めており、公庫廃止による消費者の不利益など全く感じさせない“がんばり”を見せています。
しかし、公庫廃止後も、いまの“がんばり”が続くかどうかは、現時点では何とも言えません。今年2月に全国銀行協会がとりまとめた報告書「住宅金融市場の改革について」を読んでみても、強調されているのは「民業圧迫」のことばかり。公庫廃止による消費者のメリットについてはほとんど触れられておらず、残念ながら公庫廃止後の住宅ローン市場のあるべき姿を示しているとは言い難い内容だからです。
果たして日本の住宅ローンはどうなっていくのでしょうか?今さら、公庫廃止を白紙に戻すべきというつもりはありませんが、供給者側の論理で進められてきている住宅ローン市場の改革を、消費者の立場から考え、住宅ローンのあるべき姿を考える必要があるのではないでしょか。
「家は、人生最大の買い物」とは良く言われますが、「住宅ローンは、人生最大の買い物」という言い方は、ほとんど聞いたことはありません。
住宅ローンも、金利負担や手数料、保証料などを支払って購入する商品です。コラムで毎度取り上げてきたモデルケースの場合で3600万円もの住宅ローンを組めば、固定金利年3.0%の35年ローンで2000万円以上の金利を支払うわけですから、なんと家の建築費(2000万円)を上回ります。そう考えれば、建築家や工務店を選ぶのと同じくらい慎重に選んでも全くおかしくない商品であるはずです。
ただ、これまでは住宅ローンの選択で消費者が迷うことはほとんどありませんでした。一般的な消費者が建てたり、購入したりする規模の住宅であれば住宅金融公庫などの公的ローンの方が、民間ローンに比べて商品力の面で圧倒的に優れていたからです。
住宅ローンを組む場合も、まず公庫、足りなければ年金融資など公的ローン、それでも足りなければ民間ローンを利用するというのが定番メニュー。それ以外の選択肢を考える必要がほとんどなかったわけです。
公庫廃止に向けて民間ローンもいろんな種類の商品が登場してきています。これからは、消費者が自らの責任で住宅ローン商品を選ぶ時代と言えるでしょう。当然、住宅ローンの商品情報は、消費者に対して完全にオープンにされる必要があるでしょう。
最大のポイントは『与信』です。
つまり、住宅ローンを「貸してくれるか、どうか」です。
住宅ローンが通常の一般商品と決定的に違うのは、住宅ローンはお金で買う商品ではなく、住宅ローンを借りる人の信用力で買う商品である点です。つまり、金融機関がその人にいくらの信用力を与えるか、つまり『与信』がポイントとなるわけです。
これまでの公的ローンでは、この与信がかなり甘かったと言えるでしょう。利用者それぞれの信用力に応じて貸出金額や金利などを区別して貸し出せば、国民に対する公平性の点で厳しい批判を受けることになったからかもしれません。住宅金融公庫が、終身雇用制度に守られた公務員と身分が不安定な自営業者とを露骨に差別するわけにもいかず、年収制限などをクリアしていれば、ほとんどの人が同じ条件で住宅ローンを借りることができたわけです。
民間ローンと公的ローンの最大の違いは、この与信の部分に反映されると考えて良いと思われます。
最近では、様々な条件をつけて金利を優遇する商品も多く提供されています。高級住宅を得意とする大手ハウスメーカーA社がノンバンクB社と組んで、顧客向けに優遇金利ローンの提供を開始したとき、A社の担当者が「当社の住宅の品質の高さを評価して優遇金利が適用されることになった」と説明するので、“裏を取る”のが商売のジャーナリストとしてB社に確認すると、こんな答えが返ってきました。
「A社の住宅を建てられるような人は、お金持ちが多く、返済が滞るなどの信用リスクが低いと判断して優遇金利を適用することにした」。
民間では、信用リスクによって貸出の条件が変わったり、貸してくれなかったりするのは当然のことで、住宅ローンでも例外ではないようです。新聞や雑誌などで住宅ローンの金利別比較表を見かけることがありますが、金利が一番有利な住宅ローンに申し込んだとしても必ず貸してくれるわけではなく、断られるケースも少なくないという話も聞きます。
「住宅ローン市場が変革期を迎えている」と私が指摘する意味は、この『与信』の部分を指しているのです。
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