A-Style 家づくりの経済学  17
家づくりの経済学
家づくりの経済学(17)居住コストの比較
「自分が賃貸事業者になったつもりで、自分に家を貸す」—これに基づいて、持ち家(新築)、賃貸住宅、定期借地権付き住宅、中古住宅のコスト計算についてシミュレーションを試みてきましたが、改めてこれまでの話をまとめてみることにします。

これまで異なる住居形態を比較することはあまり行われていなかったように思いますが、住むという行為に伴って発生するコスト「居住コスト」に着目することで、異なる居住形態を単純比較することも可能になると考えられます。
これまで何度も書いていますが、「夢のマイホームは新築一戸建てに限る」といった“こだわり”を捨てて、「居住コスト優先で考えるべき」と言うつもりはありません。ただ、居住コストも認識した上で住まい選びをする方が、家づくりに伴う様々なリスクにも対応しやすいと思うのです。

このサイトは戸建ての家づくりがメーンですが、参考までに新築マンションを購入する場合の居住コストも考えてみましょう。土地が坪単価150万円で10坪(33平方メートル)の1500万円、建物が坪単価100万円で30坪(99平方メートル)の3000万円、総額4500万円の高層マンションを想定してみます。
残念ながら、私自身はマンションの住んだ経験が全くないので、細かなところのシミュレーションは勉強不足なので、今回は仮に固定資産税などの税金や維持管理費、火災保険・地震保険料は戸建て新築住宅と同じ数字を使うことにしました。そのあたり詳しい方がいらっしゃったら、ぜひ情報をお寄せください(こうした呼びかけができるのも、インターネットメディアの良さかも…)。
マンションが木造住宅と大きく違っているのは減価償却費です。鉄筋コンクリート造の住宅の法定償却年数は47年ですので、定額法による年間償却額は約57.4万円。木造戸建てに比べて建物の価格は高くなりますが、年間の償却負担は軽くなるわけです。
基本的には、これまでのコラムで取り上げたモデルケースをベースにしていますが、シミュレーション作業で(私が)楽をするために住宅ローンは全て、固定金利3.0%で借りられるとしました。定期借地権付き住宅の場合は、土地担保がないので住宅ローンを組むのが実際のところ難しいようですが、今回は同じ条件としています。
中古住宅の減価償却は、年間償却額は新築と同じ90万円で、償却期間を11年としました。維持管理費も年間12万円、保険も建物の償却が進めば保険金額と保険料は減額するのが一般的ですが、新築時から最後まで居住期間中は同額としました。



今回のシミュレーションを改めてグラフに書いてみると、賃貸コストと、マンション(Mコスト)、定期借地権付き住宅(定借コスト)、中古住宅の居住コストは、当初10年間で見た場合、それほど大きな差が生じないという結果になりました。
居住コストの格差が小さくなっている最大の要因は、シミュレーションでも適用した固定金利年3.0%という低金利によるものでしょう。最近になって金利が上昇局面に入ってきましたが、金利が上がれば、賃貸に比べて居住コストが上昇することになります。
一方で、戸建て木造住宅(新築)の居住コストが、他に比べて割高であることも一目瞭然という結果になりました。他の居住形態に比べて居住コストが割高になる原因は、次の2つに整理できると思われます。
【1】減価償却負担が重過ぎる。
同じ4500万円の新築マンションと比較するとはっきりします。金利負担が同じにも関わらず格差が生じるのは、木造住宅の償却負担が重いためです。償却期間を20年から、鉄筋コンクリート造と同じ47年とすることは出来ないかもしれませんが、年間償却額が同じ57.4万円となる31年まで延ばすことができれば、償却負担も同じになり、マンションのグラフとほぼ重ねることができます。
中古住宅との比較でも、減価償却負担の圧縮が居住コストの低下に大きく寄与することが読み取れます。
【2】地価が高すぎる。
同じ新築住宅を建てるにしても、土地を所有する場合と、定期借地権付き住宅のように借りる場合とでは、居住コストにかなりの開きがあります。この格差は、土地を所有することで発生する金利負担と、借りる場合の借地料との違いです。
この差を縮めようとすれば、金利はもう下げ止まっているわけで、あとは地価そのものを下げていく以外に方法はありません。
先に国土交通省が発表した今年7月1日現在の都道府県地価調査でも、住宅地は前年度に比べて4.8%低下し、12年連続の下落となりました。東京圏をみても、都区部の下落幅は1.8%ですが、多摩地区は6.0%、埼玉県もさいたま市は3.7%ですが、その他は7.2%と、郊外に行くほど、下落幅が大きくなっています。
ここ数年、「都心居住」をキーワードに中心市街地でのマンション建設が活発化、好調な売れ行きを示してきました。東京都区内でも土地建物合計で坪単価200万円以下の物件を商品化できるまでに、地価と建築費が下落したのが主因です。
それに比べて戸建て住宅に適した郊外の住宅地の地価がまだ割高なのかもしれません。シミュレーションでは新築戸建て住宅の土地は坪単価50万円で設定していますが、モデルケースにした新築マンションの居住コストとほぼ同じにするには、坪単価30万円ぐらいまで地価を下げなければならない計算です。

住宅の価格査定(資産価格)にしても、地価にしても、消費者にとっては如何ともし難い問題ですが、金利動向も含めて「居住コスト」の違いを認識しながら、自分のライフプランにあった「家づくり」を考えていただければと思います。
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