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家づくりの経済学
15
家づくりの経済学(15)中古住宅と減価償却
前回のコラムで取り上げた定期借地権付き住宅では、住宅ローンなどの課題を多く抱えているのですが、その話は改めて取り上げるとして、今回は「減価償却」へと話題を進めます。
[家賃]×[居住期間]≧[金利負担]+[減価償却費]+[固定資産税等]+[維持管理費]+[保険料等]
「自分が賃貸事業者になったつもりで、自分に住宅を賃貸する」—それを表現したのが上記の数式ですが、ここに出てくる「減価償却費」に違和感を持った方もいらっしゃるかと思います。
「個人が自宅として買った家をなぜ減価償却する必要があるのか?」—先日、国土交通省の幹部と話していたときにも、そんな指摘を受けました。確かに個人消費というと全て消耗品として消費されていくだけという感覚で、減価償却する必要などないように思えるからです。
しかし、家も売買可能な資産であるわけですし、企業と同様に個人でも減価償却の考え方を導入する方が経済合理性に適っているのではないでしょうか。とくに「減価償却」という考え方を導入することによって、日本では欧米に比べて未発達なまま放置されてきた「中古住宅」を、住宅市場のなかにキチンと位置付けることが可能になると思うのです。
日本で中古住宅市場がなかなか発達してこなかった理由として、いろいろな説明がされてきました。「日本人は新モノ好きで、手垢の付いた中古品は好まれない」、「耐用年数が短くて、中古で買っても長く住み続けることが難しい」などの理由が多かったように思いますが、あまり経済合理性にかなった説明ではないように思われます。 バブル以前は、建物に比べて土地の価格が高すぎたために住宅購入費全体でみた場合、新築でも中古でもそれほど格差が生じないために、「その程度の差であるなら新築の方が良い」と考える人も多かったかもしれません。逆にデフレ時代に入って、仕様や設備が充実した新築物件が割安で投入され、中古物件に不利に働いているとも考えられます。
いずれにしても「新築を買うべきか、中古を買うべきか」を経済的な視点で比較する方法を、誰もはっきりと説明してこなかったように思うのです。
もちろん、「いくら高くても新築の方が良い」人は新築を買えばよいわけですが、新築と中古の違いをしっかりと認識した上で決断できる材料を消費者に対してキチンと提供する必要があると思うのです。
冒頭の数式で「家賃」を下げるために「減価償却費の負担をいかに軽減するか」を考えた場合、取りうる有効な対策はひとつしかないと考えられます。減価償却が進んだ「中古住宅」を購入することです。
例えば、モデルケースである2000万円の木造住宅の場合、年償却額90万円で20年間償却し続けることになるわけですが、その住宅も築15年も立てば1350万円を償却したことになります。この中古住宅を2000万円−1350万円=650万円で購入できたとすれば、残りの減価償却費は450万円となり、450万円のリフォーム費用を追加したとしても、償却負担は合計で900万円。新築の場合の1800万円に比べて大幅に軽減される計算となります。
もちろん、購入した中古住宅の耐用年数がどのくらい残っていて、数式で表されている[居住期間]を何年まで設定できるか。家が老朽化している分[維持管理費]も増加するのではないか—などの問題もあります。それでも「減価償却費」を共通項にして、こうした要素も加味することで新築と中古を比較することが可能ではないかと思うのです。
モデルケースの「家づくり」を中古に置き換えて考えてみることにします。
土地は2500万円、建物は築15年の650万円で、合計3150万円。自己資金は900万円とすると、住宅ローンの融資額は2250万円ですが、リフォーム費用450万円もローンで借りるとして合計2700万円という設定にします。
【新築】(居住期間20年)
[数式の左辺]=約14.5万円(住宅ローン返済相当額)×20年=3491万円
[数式の右辺]=金利負担1770万円+減価償却1800万円+固定資産税等362万円+維持管理費240万円+保険料等75万円=4247万円
【中古】(居住期間20年)
新築の場合に支払うローン返済月額と同額になるように2700万円の中古住宅ローンを設定すると、年3.0%固定金利で返済期間は22年となり、金利負担は20年間で980万円となります。維持管理費は、新築に比べて1.5倍に設定することにします。
[数式の右辺]=金利負担980万円+減価償却900万円+固定資産税等271万円+維持管理費360万円+保険料等75万円=2586万円
今回のシミュレーションでは、同じ20年間住むことを考えたなら、中古をリフォームして住む方が経済的という結果になりました。この中古住宅の市場価格が650万円より高かったり、中古住宅の状態が悪くてリフォーム費用が450万円では済まなかったりすれば、金利負担も減価償却費も増えて、中古が必ずしも経済的とは言えなくなってしまいます。
逆に考えれば、中古住宅を購入するのなら、「リフォーム費用がどれくらいの範囲が適切なのか」という目安をつけることも可能でしょう。リフォーム費用があまりかからない状態の良い中古住宅に対する需要が高まり、中古住宅の性能品質が正しく評価される市場環境が徐々に形成されていく。そうした好循環が期待できるかもしれません。
中古住宅に個人が安心して投資できる環境を整えていかない限り、国土交通省がいくら中古住宅流通の促進をぶち上げても“絵に描いた餅”で終わってしまうように思うのです。
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