A-Style 家づくりの経済学  14
家づくりの経済学
家づくりの経済学(14)定期借地権の話
住宅ローンの「金利負担」を軽減する—このことだけを最優先で実現しようと思うのなら、「土地は買わない」という方法があります。
「持ち家が欲しいのに、土地が借地というのはイヤ!」と、最初から拒絶する方もいらっしゃるでしょう。
しかし、土地が借地なら、借地料や保証金はいくらかという問題はありますが、土地を購入するための元金は不要になるわけで、その分「金利負担」は軽減できることにはなります。
バブル崩壊後、企業などでは不動産に対する考え方を「所有」から「利用」へと大きく転換してきました。これまで「所有」にこだわる人が多かった個人でも、そろそろ発想の転換を進める必要があるように思うのですが、いかがでしょう。

皆さんも、いろんな人生設計をお考えになっていると思います。私も、新聞社に勤める記者というサラリーマン生活から足を洗うことを決断したときから、自分自身で今後の人生プランを描く必要が一段と強まりました。
企業の終身雇用制が揺るぎない時代であれば、サラリーマンにとっての最大の転機は定年退職だけだったと言えるかもしれません。就職してから定年を迎えるまでの人生プランは、転勤などを含めて会社にお任せ状態。安定した収入や退職金も見込めるので、住宅購入にも安心して踏み切れたわけです。
良く言えば楽天主義、一般的に言えば能天気な私ですが、サラリーマン生活をやめて最も実感しているのは「“期限を区切って”人生プランを考える」ことの重要性です。
「えっ、そんなことにも、気が付いていなかったの?」と、思わず馬鹿にされそうですが、サラリーマン生活に慣らされていると陥りがちな部分かもしれません。
自分が勤めている会社が事業プランを策定するときには、必ず期限を区切って、投資をいつまでに回収して期間内にどれだけの収益を上げるかを計画するはずです。ところが、いざ自分が住宅を購入(=投資)する時になると「いつまでに投資を回収するのか」がほとんど考えられてないように思うのです。

この連載コラムでは“期限を区切って”住宅取得の収支を考えてきました。いずれ住み替えようと考えていらっしゃるなら、その時は土地を手放して売ってしまうケースが多いでしょうし、死ぬまで住んで子どもたちに土地を残したとしても相続税を納付するために物納したり、売却したりするかもしれません。
日本でも、定年退職後に生活費に困ったとき保有不動産を現金化するための手法として、リバースモーゲージ制度が導入されています。2500万円を現金で持っていて預金から生活費として引き出すのか、土地として持っていてリバースモーゲージで現金化して引き出すかというだけの違いと言えるかもしれません。いずれ全部引き出してしまえば、土地も手放さざるをえないことになります。
“期限を区切って”考えてみると、土地の「所有」にそれほど固執する必要がないように思えます。要は、自分の人生プランに照らしてみて、土地の所有が現時点でプラスかどうかを冷静に判断する必要があると思うのです。

日本にも1992年に定期借地権制度が導入されました。基本的には契約期間は50年以上で、契約期限が終了した時点で建物を取り壊し更地にして土地所有者に返却するという仕組みです。ほかに、30年を過ぎた時点で土地所有者が建物を買い取り、その時点で借地契約が切れる建物譲渡特約付借地権制度もあります。
すでに、制度が導入されて10年以上が経過しましたが、02年末で定期借地権住宅の累計戸数は4万戸で、戸建て住宅の供給戸数は年間3000〜4000戸のペースです。年間の新設住宅着工戸数は110万戸前後、うち半分が戸建てとして1%に満たないのが現状です。
定期借地権普及促進協議会のホームページには供給中の物件情報が掲載されていますが、船橋市(千葉県)にコラムで取り上げてきたシミュレーションと同じ50坪ぐらいの敷地面積の物件が出ていました。船橋市あたりで地価が坪50万円ということはないでしょうが、この物件を参考にして試算してみましょう。
この定期借地の保証金は450万円、月額賃料は2万3000円(年27.6万円)くらいでした。50年の期限で土地を借りて、シミュレーションで何度も登場している2000万円の家を建てることにしましょう。

自己資金900万円のうち土地の保証金として450万円を支払うと、残り450万円を頭金にして残りの建築費1550万円が住宅ローンの元金となります。固定金利3.0%で返済期間を15年とすると月返済額は10.7万円。土地の賃料を合わせても13.0万円ですから、土地を購入することを考えれば十分に返済できる範囲です。
「金利負担」は377万円となり、借入金3600万円、固定金利3.0%の35年返済に比べて1841万円軽減される計算となります。
さらに、土地を所有しないので、その分の固定資産税は不要となるはずですから、地価2500万円、評価額7割とした場合の50年分の固定資産税は約290万円。その一方で、土地の賃料が新たに発生し、50年分で1380万円の支出となります。
差し引き計算すると、土地を50年間所有するコストと土地を50年間借りるコストを比べると、借りた方が751万円安いことになります。50年後には保証金450万円も返還されると考えれば、1200万円の差となります。
この試算結果を見てどう思われたでしょう。はっきりしているのは、土地をどうしても「所有」したいのなら「金利負担」のかかる借金はせずに、現金で購入すべし!ということでしょうか。
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