A-Style 家づくりの経済学  11
家づくりの経済学
家づくりの経済学(11)持ち家と賃貸、どっちが得?(3)
前置きがずい分、長くなってしまいましたが、実際にシミュレーションを行っていましょう。
条件設定として、事業『期間』は、20年と40年の2通りを考えてみます。35歳の自分が20年後(55歳になったとき)に住み替える場合と、40年後(75歳になったとき)まで住み続けた場合といった設定です。
地価変動リスクは、横ばいが続く(損失が発生しない)ケースと、地価が年1%ずつ下落し続けるケース(損失が発生する)ケースを想定してみましょう。
最後に、事業収支ですが、自己資金の900万円を年1%で運用できるという設定としました。

表には、住宅取得控除(正式には住宅借入金等特別控除)を含めませんでした。所得税納付額によって享受できるメリットに、大きな差が生じるからです。
ただ、3600万円もの住宅ローンを組める方は、年収が少なくとも600万円以上(年収に占める返済負担率25%以下)と考えられるので、所得税は年間20万—30万円と考えられます。現在は住宅ローン残高の1%を10年間、税額から直接控除されるため、3600万円のローンであれば、所得税はほぼ全額還付されることになるでしょう。10年間で200万—300万円、収支改善の効果が出る計算です。

今回のシミュレーションでは、住宅取得控除を加えたとしても、持ち家と賃貸を比べると、かなり長く住み続けなければ、「持ち家のメリットが出ない」という結果になりました。
「家賃並みの支払いで、家が買える」—そんな甘い言葉に踊らされて建売戸建て住宅を買っても、“元を取る”には30年、35年もの長期間、必死にローンを返済しながら住み続けることを覚悟しなければならないのです。
さらに、地価下落が今後も続くようであれば、40年住み続けても“元が取れない”可能性もあるのです。今回のシミュレーションでも、住宅取得控除のメリットを加えて辛うじてプラスになるかどうかというところです。
ところが、日本の住宅の平均寿命は26年(暫定値で31年)でした。従来のような家を使い捨てにする文化のままでは、“元を取る”前に家の寿命が尽きてしまうのです。

バブル崩壊前のように地価が20年で3倍に上昇するといった時代であれば、10年で転売しても損失も発生せずに、「住宅すごろく」に例えられた住み替えも可能だったかもしれません。今回、シミュレーションで示した従来からの「持ち家取得モデル」は、明らかに地価上昇を前提とした古いビジネスモデルであり、デフレ時代には通用しなくなっていると言えるでしょう。
バブル崩壊後も住宅界や不動産業界では、住宅ローン金利の引き下げや、住宅取得控除の大幅な拡充などを要望し、政府も景気対策の名目で積極的な住宅取得促進策を展開してきました。もう行き詰まってしまった古いビジネスモデルのまま、ひたすらカンフル剤を打ち続けてきたわけで、うがった見方をすれば、金融機関、企業、さらに政府が抱えてしまった不良債権の担保不動産を、マンションなどの住宅に転用して、何も知らない国民に高値で買い取らせてきたと言えるかもしれません。

「夢のある家づくり」—デフレが続く限り、もう諦めなければならないのでしょうか。
もちろん、そう言うつもりはありません。産官学が協力しながら、消費者側に立った新しい「持ち家取得モデル」を構築し、消費者が住宅に投資できる環境を整えていく—そのことが今、真剣に求められていると言えるのです。
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