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家づくりの経済学
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家づくりの経済学(9)持ち家と賃貸、どっちが得?(1)
「持ち家と賃貸、どちらが得か?」—住宅情報雑誌などで、そんなタイトルの特集を良く見かけます。そうした特集が組まれるというのは、この問題で頭を悩ませている人がかなりいらっしゃるということなのでしょう。
確かに、高い家賃を払って賃貸住宅に住んでいる人にとっては切実な問題でしょうが、持ち家と賃貸住宅は、同じ住宅であっても区別して考える必要があります。単純に比べるのは非常に危険であると言えるでしょう。
この連載コラムの第4回で書いたように、家には「家庭」と「家財」の2つの要素があります。その2つの要素は、持ち家には当てはまりますが、賃貸住宅にはもちろん「家財」の要素は含まれません。つまり、賃貸住宅に住むために支払うおカネ=賃料は、住むための建物を確保するための「経費」。しかし、持ち家を取得するための支払うおカネは、住むための建物を確保するための「経費」に、土地・建物という資産を購入するための「投資」が加わっているわけです。
「いま払っている家賃と同じ月額支払いで、住宅ローンを組んで家を買うことができるなら、家を買った方が得ではないのか?」—確かに毎月、家賃を払い続けることができる収入があるのなら、土地・建物を買った方が得であるのは、当たり前のように思えます。
しかし、これは、おカネを支払うという“フロー”の部分だけで比較しているわけで、“ストック”の部分をほとんど考慮していません。地価が上昇しているときにはフローだけで考えても問題はあまり生じなかったのですが、現在のように地価が下落している状況では、ストックの要素を無視するわけにはいかないでしょう。
私自身は金融や不動産のプロではありませんが、それほど複雑ではないシミュレーション方法で持ち家と賃貸を比較することは可能だろうと考えています。プロから見れば“問題あり”のシミュレーションかもしれません。
しかし、日本社会で問題なのは、責任ある立場の企業や役所が、キチンとしたシミュレーションを国民に公開してこなかったことです。金融機関も、不動産業者も、メディアも、さらに役所も、消費者が最も頭を悩ませている問題に対してキチンとした情報公開もせずに、個人に自己責任を問う。全くおかしな話です。
さて、家づくりに「資産への投資」という視点を加えるには、どうしたらよいでしょう?
住宅ローンの毎月の支払いを、例えば「7割が家賃で、3割が資産への投資」—といった具合に、単純に振り分けることは困難だと思われます。この2つの要素を切り分ける方法をあれこれ考えてみたのですが、こんな考え方をしてみてはどうでしょう。
「自分が住宅の賃貸事業者になって、自分に住宅を賃貸する」—ちょっとややこしい感じがするかもしれませんが、家に投資する自分(家主)と、家に住む自分(居住者)を、こう考えることで区別しようというわけです。
賃貸住宅であれば、居住者が支払う費用は、毎月の家賃と管理費だけです。入居時に敷金、礼金が発生しますが、それを加えても、年間費用は(家賃+管理費)×13カ月ぐらいといったところでしょうか。
一方、持ち家にかかる費用は、住宅ローンを利用していれば毎月のローン返済のほかに、[1]家の維持修繕費[2]火災保険・地震保険料[3]固定資産税などが発生します。しかし、これらの費用は、住宅ローンも、[1]〜[3]も、家の所有者=家主が支払うべき費用(=経費)であって、通常の賃貸住宅でも居住者が家賃のほかに[1]〜[3]の費用を追加徴収されることはありません。
家主は、これら賃貸事業を行うのに必要な全ての経費を、家賃収入でまかなえるように月額賃料を設定することになります。月額賃料には住宅ローン(土地・建物の取得費用)の返済額全てを転嫁することも可能ですが、居住者が土地・建物の取得原価まで家賃で負担するのでは居住者自らが住宅を買うのと同じことになり、賃貸に住むメリットがなくなってしまいます。基本的には月額賃料に加えるのは「金利負担」の部分だけと考えます。
建物は、土地とは違って、経年劣化によって資産価格が毎年、下落していきます。家主が賃貸事業を継続していくためには、この建物資産の目減り分を家賃で回収する必要が生じます。これが「減価償却」という考え方です。
整理すると、自分が家主となって賃貸住宅を所有して維持管理するために必要な経費は、[1]維持修繕費[2]火災保険・地震保険料[3]固定資産税等[4]金利負担[5]減価償却—の大きく5項目となります。これらの経費を、家賃(=住宅ローンの月返済額相当)でまかなうことができるのなら、確かに「持ち家が得」と言えるわけです。(つづく)
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