A-Style 家づくりの経済学  8
家づくりの経済学
家づくりの経済学(8)自己資金の話(2)
「家の資産価格=査定価格は急速に低下したとしても、土地の資産価値が残っているから心配ないのでは…」—前回のコラムを読んで、そう思った方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、地価の下落が続いている現状で、果たしてそう言い切れるのでしょうか。それを今回、シミュレーションしてみたいと思います。

その前に簡単に地価問題について考えてみましょう。
今年3月に発表された2003年1月1日現在の公示地価は12年連続の下落となりました。全国平均で商業地が8.0%、住宅地も5.8%の下落となり、住宅地はピークだった91年に比べると12年間で4割下落してしまった計算となります。
日本の地価は、戦後からバブル期まで一貫して右肩上がりで上昇し続けました。第1次石油ショックのあとの1974年から1991年までの17年間で、地価は約3倍になったのですが、その急激な上昇について日本のGDP(国内総生産)の伸びとほぼ比例しており、バブル期の一時期を除けば投機的なものではない、との説明がされてきました。
しかし、もし地価の水準がGDPだけで決まるのなら、バブル崩壊後の地価下落はもう止まってよいはずなのですが、なかなか下げ止まる気配がありません。
日本の地価が急ピッチで上昇し続けた大きな原因は、やはり人口増加であると思われます。140年前の明治維新を機に日本にも産業革命が訪れ、英国、フランス、米国などの先進諸国と同様に産業革命後の人口爆発が発生しました。幕末の日本の総人口は3000万人台だったと言われますから、わずか140年間の間に、この狭い日本の国土で人口が4倍近くに増えたわけです。
日本と同じ狭い国土の英国では、産業革命後の人口爆発は200年ぐらいの間に2倍に増えた程度だと聞きます。日本の人口爆発は、4度の戦争という人口増加要因も加わって、さらに加速したと考えられます。これが旺盛な土地需要を生み、地価上昇を支えてきたと推定できるのではないでしょうか。
その日本が、今度は急激な人口減少社会を迎えようとしています。2006年の1億2700万人をピークに、35年後の2040年には、1970年レベルの1億人まで減少するとの推計も出されています。日本経済への影響を考えると、あまり地価が下落するとは書きたくないのですが、人口問題は地価にとって大きな懸念材料であることは確かでしょう。

さて、今回のシミュレーションでは、家は前回コラムと同じ、延べ床面積約42坪、建築費2000万円の木造在来住宅、土地は敷地面積50坪、坪単価50万円の2500万円で、家・土地合わせて総額4500万円と設定しました。
問題の地価ですが、期待感も込めて年率1%ずつ上昇するケース(1)、このまま横ばいで推移するケース(2)、年率1%ずつ下落するケース(3)を考えてみました。下落幅を1%としたのは、人口減少のペースが年率0.8%程度と想定されているためで、30年間で地価が現在より25%程度下がる計算です。
住宅ローンは、金利が前回コラムと同じ当初10年が2.4%(固定)、それ以降は4.0%(固定)で、返済期間は土地も含まれるので35年に設定しました。さすがに4500万円の物件を、自己資金なしで購入しようと考える人はほとんどいないでしょうが、もし「頭金無し」でローンを組んだ場合、月返済額は当初10年が15.8万円、それ以降は18.8万円、ローン残高は残高1のグラフのように推移します。「頭金2割(900万円)」を入れると、月返済額は当初10年が12.6万円、それ以降は15.0万円、ローン残高は残高2のグラフとなります。



もし地価が右肩上がりで上昇し続けている時であれば、資産価格(1)のグラフを見ても判るように「頭金無し」の住宅ローンで購入してもリスクをカバーできる可能性があったわけです。バブル期以前は、住宅ローン金利も今のように低利ではありませんでしたが、一方で地価は順調に上昇していましたから、ローン破たんの心配もほとんど生じなかったと言えます。
しかし、地価が横ばい、さらに下落傾向にある時に、「頭金無し」は自殺行為に等しいことは一目瞭然です。しかも「頭金2割」を用意したとしても、地価下落が続けば、資産価格がローン残高を下回る、いわゆる「担保割れ」が発生することもグラフから簡単に読み取れます。
バブル期、さらにバブル崩壊直後、まだ地価が高いときに住宅を購入された方の住宅買い換えが難しくなっているのも、物件を売却しても住宅ローンを完済できない「担保割れ」が生じているからでしょう。地価下落が続くなかで、この担保割れのリスクにどう対処していくかは大きな課題と言えるのです。
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